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実哲也著「アメリカを知る」
もう3年以上もアメリカに行っていませんが、あいかわらずアメリカへの憧れがあり、たまにアメリカの本が読みたくなります。今回もそんな気持ちで読んだ1冊です。



●筆者は新聞社の記者としてニューヨークとワシントンに十年あまり駐在し、全米各地を取材して回るなど米国ウォッチを続けてきました。広大な国であり、地域によって、また地域の中でも豊かなところと貧しいところで雲泥の差がある国です。多様な考えを尊ぶ国だけに人によって、意見やモノの見方は全く異なります。米国全体を客観的に語るのはほとんど不可能であり、何らかの偏見は避けられないと言えます。(p.5)

●高い技能や技術を持っていれば、仕事の心配はないという神話も崩れつつあります。先端的な製造拠点や研究開発拠点を米国外に移す動きがハイテク企業の間で活発になっているためです。背景には優秀な技術者たちを安い人件費で集められる場所が世界中で増えていることがあります。「ハイテクな仕事」はもはや安全でなく、今はむしろ介護師、マッサージ師やスポーツ・インストラクターなど顧客との接触が基本の「ハイタッチな仕事」のほうが生き残るのではないか、という声すら出ています。(p.28)

●米ゴールドマン・サックスの見通しでは、通常のドルベースで比べたGDPの水準でも2027年までに米中が逆転する可能性があるとしています。また2050年には米国とインドのGDPの規模が並ぶと見ています。(p.32)

●輸出額で見ても米国の相対的な力の衰えがうかがえます(図1-4)。かつては群を抜いてナンバーワンでしたが、現在はドイツ、中国に次ぐ第3位に転落しています。一方、輸入額ではなお中国の2倍近い規模を維持しており、世界貿易の重要を生み出す力はいまだ健在です。米国は人口が1年に約1%の比率で増え続け、技術革新の力もなお高いので、一定の潜在的な成長力はまだ維持できそうです。1人当たりのGDPも世界でトップクラスを維持する公算が大きいでしょう。その限りでは経済力の相対的な低下自体はさほど心配することではありません。(p.33)

●米国が最も恐れているのは核兵器が拡散し、これがテロリストなど非国家グループの手に渡ることです。~(中略)~核兵器が使用されたり、核保有をバックにテロ集団などが脅しにかかってきたりする事態が現実になりうると見ています。その可能性は、核開発の動きが北朝鮮などに広がり、テロリストが各地で勢力を伸ばすなかで実際に高まっているというのが米国の専門家の見立てです。(p.37)

●ただ、中国が外にあまり見えない形で軍事力を強化しつつあることには警戒の目を怠っていません。資源獲得を理由にアフリカの独裁国家や、ベネズエラなど南米の反米国家との関係を強化し、経済支援を進めていることにも眉をひそめています。(p.39)

●大統領を直接支えるのがホワイトハウスにいる首席補佐官、国家安全保障担当補佐官をはじめとする数百人もの職員です。彼らは上院の承認なしに仕事につくことができます。政権によって性格は異なりますが、補佐官らは閣僚以上の権力を持っているケースがままあります。オバマ政権ではホワイトハウスの国家経済会議の委員長を務めるローレンス・サマーズ氏が経済政策で最も大きな影響力を持つ人物です。安全保障担当補佐官もリチャード・ニクソン政権時代のヘンリー・キッシンジャー氏、ジェラルド・フォード政権時代のブレント・スコウクロフト氏などは外交政策のかなめの役割を果たしました。(p.45)

●上院はもともとローマの元老院を意識してつくられたもので、20世紀初めまでは直接選挙でなく各州の州議会が選出していました。民衆によって選ばれ、時に感情に流されがちな下院を、経験豊富な上院議員が牽制することが期待されていました。いまはもちろん選挙で選ばれていますが、各州から2人(全部で100人)だけしか選ばれず、任期は6年と長いことや、上院議員出身の大統領が多いことを見れば、議員としての格は上院議員のほうが高いと言って間違いはありません。実際も下院議員などを経た経験豊かな人がついているケースが多くなっています。(p.58)

●ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズはリベラルメディアを代表する存在でした。テレビ局も報道姿勢はリベラル的でした。ところが社会の保守化も映してメディア界にも反リベラル派が台頭してきました。最初になぐり込みをかけたのは86年に始まったフォックス・テレビで、保守的な考え方を押し出して視聴者を増やしました。(p.71)

●新聞界でも82年に生まれたワシントン・タイムズなど保守紙も増えています。ワシントン・ポストもかつてのようなリベラル色を薄めており、いまは中道穏健派の主張を反映した新聞と言っていいでしょう。(p.72)

●いまでこそ終身雇用や長期雇用は日本企業の専売特許のように言われますが、1960、70年代ごろまでは自動車をはじめ米国の主要な製造企業では一生同じ会社に勤める人も珍しくありませんでした。(p.100)

●安定した国際経済関係の基礎となったのが「ブレトンウッズ体制」と呼ばれる戦後の国際通貨体制です。戦時中の1944年7月に、英米仏など連合国は米ニューハンプシャー州のブレトンウッズで戦後の国際経済秩序づくりのための会議を開き、国際通貨基金(IMF)、国際復興開発銀行(IBRD)、関税と貿易に関する一般協定(GATT)が創設されました。ブレトンウッズ体制は、自由で無差別な貿易を推進するとともに、外国為替市場の固定相場制のもとで安定した国際通貨秩序を築くことを目指したものです。~(中略)~米国がドルと金とを一定比率で交換することを保障したことがブレトンウッズ体制を確固たるものにしたと言えます。各国は保有するドルをいつでも一定比率で金と交換することができるという安心感を持ち、ドルは基軸通貨として貿易や決済の手段として世界中で活用されていきました。(p.102)

●1971年8月15日。米国人の多くが一家団欒を楽しんでいる日曜日の夜、ニクソン大統領は突如テレビを通じて声明を発表しました。「ドルに一斉攻撃をかける国際的な投機家」を繰り返し非難したうえで、大統領は国際通貨市場の安定のためドルと金の交換を停止することを明らかにします。戦後の世界経済を支えたブレトンウッズ体制が崩壊した瞬間でした。日欧など関係諸国の政府には事前に発表内容は知らされず、海外からはニクソン・ショックと言われました。(p.104)

●ただ、かつて輝いていた企業や業種の衰退の数だけを見て、米国企業や産業の力が落ち込んでいると見るのは早計でしょう。企業や産業の新陳代謝が進みやすく、産業地図が素早く変わるのが米国の特徴だからです。「自動車と金融が米国の産業の中心だから、この2つがだめになれば米国の時代も終わり」という声をよく聞きますが、これは必ずしも説得力のある議論とは言えません。日本では主要企業の顔触れがあまり変わらないので、トップ企業がつぶれたり、主要事業から撤退したりすれば、それをもって衰退と考えがちですが、同じ発想で米国を見ると全体像を見失うことになりかねません。(p.127)

●ニューヨーク株式市場の代表的な指標であるダウ30種の銘柄はときどき入れ替えがあります。その移り変わりは、そのときどきの米国産業界の主役たちの変遷をそのまま映し出しています。冷戦崩壊直後の1990年の30種銘柄のリストを見ると、USX(旧USスチール)など鉄鋼関係が2社入っていますが、いまはゼロ。1925年からリストに入っていたGMも破綻により銘柄から外れました。すでにフォードも外されていたので、自動車メーカーはリストから完全に消えました。このほかリストから消えた主要な会社をあげると、フィルムのイーストマン・コダック、タイヤメーカーのグッドイヤー、製紙のインターナショナル・ペーパー、ウエスチンハウスなどかつて米国を代表した錚々たるメーカーがあります。逆に、当時は銘柄に入っていなかったものの現在はリストに入っている企業を見ると、インテル、マイクロソフト、シスコシステムズなどのIT業種が目立ちます。メルクだけだった薬品メーカーがジョンソン&ジョンソン、ファイザーを加えて3社に増えているのも目を引きます。ウォルマート、ホーム・デポなど勢いを伸ばしている小売業者も新しく銘柄に入っています。(p.128)

●英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の時価総額ランキングによると、2009年3月末現在では原油高の恩恵を受けたエクソン・モービルが1位で、2位はウォルマート。マイクロソフトが3位で、これにAT&T、ジョンソン&ジョンソンが続いています。(p.129)

●従来型の医薬品メーカーも広い意味でバイオテクノロジー企業に入れることもできますが、世界の医薬品業界での売上高1、2位はそれぞれファイザー、ジョンソン&ジョンソンと米国企業が占めています。研究開発のための資金力が大きいことに加え、米国の当局が新しい医薬品を比較的早く承認することも、事業の成長、発展につながっています。(p.137)

●米国ほど貧富の格差が大きい先進国はありません。おカネを稼ぐためには手段を選ばぬ人々が存在するのも間違いありません。ただ、そうした事象だけ見て、米国の社会のありようを即断すべきではないでしょう。米国には政府の外にNPO(非営利団体)や教会を主体とした広大な「公」の世界があり、市井の人々が弱者に手を差し伸べています。そこを含めれば一概に冷たい社会とレッテルを張るのは行きすぎと言えます。(p.150)

●生真面目で心配性のところがある日本人は何事も念入りに計画を立て、問題が起きないように準備することを重視します。これに対して米国には、問題が起きればそれに応じて修正していけばいいという気風があります。『アメリカ人は何からつくられているか』の著者は日米のビジネスの違いを、完璧を追求する日本と、新しい目標を常に追い求める米国という形で比較しています。ただし、事細かさという点でこれまで言ったことが日米で逆になるのが契約の面です。(p.155)

●『アメリカ人は何からつくられているか』では米国人の特質を①選択肢を主張する②不可能な夢を追求する③「大きい」「よりたくさん」に執心する④せっかち⑤間違いを受け入れる⑥即興でやることへの衝動⑦何が新しいかに固執-としていますが、的を射ているところがあるな、と思います。(p.156)

●個人の発意や挑戦を促す風土の前提として、物事に対して楽観的な考え方をするという点も米国人や米国社会にはあるように思えます。社会や経済にさまざまな問題を抱えていることを認識してはいますが、人生や社会の将来に対する見方は日本人や欧州人と比べるとかなり楽観的な点は、国際的な世論調査などでも鮮明に出ます。(p.157)

●社会や政治とのかかわり方では、「政府の関与を嫌い、自立を志向する」一方で「愛国心が強く」「宗教心も篤い」という姿が浮かび上がります。米国で保守的な人々、伝統的な考え方の人々といった場合は、この3つの傾向がとくに顕著な人たちを指します。逆にこの3つにこだわりが少ない人々がリベラル派ということになります。ニューヨークやロサンゼルスなどの大都会はリベラル派が多く、テキサス州など南部では保守的な考えの人が多いとされています。(p.158)

●先進国としては異常とも言える個人の武器保有が認められている点についても、政府への本能的な不信感や政府の関与を嫌う考え方が基礎になっています。歴史的には非民主的な専制政府に対抗する意味合いがありましたし、いまでも犯罪に対して警察に頼らず自己防衛する道を残すという発想が一部にあります。(p.160)

●米国では進化論を否定する人が少なくないのですが、これも宗教の影響と言えます。「宗教と公共生活に関するピュー・フォーラム」の07年の調査では、「進化論は人類の起源の説明としてベストではない」と考える人は45%で、そうでない人は48%となっています。学校で進化論だけ教えるのはおかしいという声が草の根から出てくるのも米国ならではのことでしょう。(p.163)

●個人が行う寄付の額も多く、国内総生産(GDP)に対する比率は毎年1%を超えており、先進国では常にトップにいます。金持ちが巨額の寄付をしたり、社会活動のための財団をつくったりするのは米国の伝統と言えます。文化や教育への慈善活動で名をなした鉄鋼王のカーネギーは「金持ちのまま死ぬのは不名誉な死である」という言葉を残しました。(p.168)

●人々に一番近いところで、人々自身が参加しながら意思決定を進めていく。これも米国の政治の原点であり、いまでもその伝統が残っています。その一つの形がタウンホール・ミーティング。歴史的にはニューイングランド地方の共同体で始まったもので、住民が集会所に集まっていろいろな問題について意見を述べたり、共同体の長に質問したりする会合です。(p.176)

●日本の県知事は補助金を求めて永田町を目指すが、米国の州知事は世界を目指す-。中国など世界中を精力的にセールスに回る州知事の姿を見るとそんなことも言いたくなります。~(中略)~大半の州は海外に多くの事務所を持ち、地元企業・製品の売り込みや投資誘致にしのぎを削っています。(p.180)

●おおざっぱに言うと、「南へ、西へ」というのが米国で目立つ人口移動です。歴史的に米国の経済活動の中心であり、豊かでもあったのが米国の北東部で、ニューヨークやボストン、フィラデルフィアなどの大都会がここに含まれます。(p.181)

●これに対して東西沿岸部の住民は宗教に関心が薄く、自由なライフスタイルを望むという点で、カナダの人々に似ている」。内陸部は「レッド・ステーツ」で共和党支持が多く、東西両沿岸部は「ブルー・ステーツ」で民主党支持が多いという区分けです(米国では赤は共和党、青は民主党の色とされます)。(p.189)

●繰り返しますが、保守的、宗教色が強い、あるいはリベラルといった色分けは相対的なもので、強調しすぎるのは誤りです。米国のメディアではこの点を誇張した記事が載ることも多いですが、鵜呑みにしない方がいいでしょう。保守的な地域でも大学町や都市部ではリベラル派が多く、逆にリベラルな州でも大都会を離れると保守的という点も考慮する必要があります。(p.191)

●米国の各州にはそれぞれ自ら名乗ったニックネームがあり、自動車のステッカーにはたいていそれが記されています。州の特徴や誇りをうかがわせるものが多く、これを知るのも楽しいものです。フロリダ州の「サンシャイン・ステート」、かつて黄金ラッシュで沸いたカリフォルニア州の「ゴールデン・ステート」などはそうだろうなという感じですが、ワイオミング州の「平等の州」、ニューメキシコ州の「魅惑の土地」などはどうしてそう名乗ったのか興味をそそられます。このほか州の標語もあります。ニューハンプシャー州の「自由か死を」、インディアナ州の「アメリカの十字路」などです。(p.191)

●一方、アジア系の人口増加も著しく、カリフォルニア州では人口の14%が中国、韓国などを中心としたアジア系です。これに次いで比率が高いのは北東部のニュージャージー州、西部のワシントン州で、それぞれ8%がアジア系です。(p.193)

米国の人口は2007年に3億人を突破しました。最近は毎年平均で300万人近く、率にするとおよそ1%ずつ増えています。(p.195)

●金融界への国民の激しい怒りは、「政府がしっかり監視し規制せよ」という方向ではなく、「自業自得で失敗した奴らを政府が2度と救済することがないようにせよ」という方向に議論を進めていると言えるでしょう。このあたりが、政府による規制強化論や市場への不信感が前面に出ている欧州や日本と異なるところかもしれません。(p.204)
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