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広瀬弘忠著「人はなぜ逃げおくれるのか」
「人はなぜ逃げおくれるのか」に直接答えていない部分も多い本かと思います。期待が大きかっただけに、少しだけ残念な感じもしました。


●これまでの日本や欧米での研究結果によると、災害の被害をさけるために避難の指示や命令などが発令されても、避難する人びとの割合が、50パーセントを超えることは、ほとんどないということである。安全に慣れてしまって、危険を実感できないでいるのである。(p.11)

●ある範囲までの異常は、異常だと感じずに、正常の範囲内のものとして処理するようになっているのである。このような心のメカニズムを、"正常性バイアス"という。この正常性バイアスが、身に迫る危険を危険としてとらえることをさまたげて、それを回避するタイミングを奪ってしまうことがある。(p.12)

●災害や事故に出合って、平常心でいることは難しい。~(中略)~ただそれが、直ちに大勢の人びとが先を争って、お互いがお互いの進路を邪魔する敵のように、互いに踏みつけたり、押しつぶしたりして死傷者を生じるパニックが起こることにはつながらない。つまり、異常行動としてのパニックは、多くの災害や事故ではあまり起こらないのである。パニックはまれだ、というのが専門家の「常識」なのである。(p.14)

●もし、ホテルやデパートの管理責任者がパニック神話の信奉者で、大勢の客がパニックになって大混乱を起こすのを恐れて、火災の発生を知らせるのを遅らせるようなことがあったとしたら、どんなことになるだろうか。~(中略)~この惨事の原因は、パニックではなく、避難するタイミングをうしなったことにある。これまでに起こった大火災のなかには、ホテル、劇場、クラブなどの管理責任者の思い違いが、大きな犠牲に結びついたケースがいくつもある。(p.16)

●16人は、10時8分に階段を下りはじめた。だが、避難の途中でタワーが崩壊した。~(中略)~64階より上の階でも、多くの人びとが避難に成功していたにもかかわらず、救援のエキスパートへの過度の信頼が、ホーイらの自衛・自助行動の開始を阻害してしまったのである。私たちは、災害時にはエキスパート・エラーがありうることを、つねに念頭に置くべきである。最終的に自分の身を守るのは自分自身であることを、しっかりと自覚していなければならないだろう。(p.21)

●ライン河を筆頭にヨーロッパの国際河川では、19世紀より水運の便宜と洪水対策のため、河川の蛇行部分を削り、まっすぐにする"整形工事"が行われてきた。流れに"遊び"がなくなったため、かつてはゆっくりと流れていた大河の流速が、それまでの2倍にもなってしまったのである。~(中略)~ドイツ、フランス、ベルギー、オランダなどを毎冬のように襲う大洪水には、このような人為的な原因が関わっている。(p.22)

●このほかにも、一般にあまり知られていないことがらだが、救援のために被災地を訪れる一般のボランティアのなかに、災害現場の悲惨さと、混乱の渦中で、心的なストレスが高まり、カウンセリングなど心理的ケアが必要になる人がでてくることがわかっている。~(中略)~阪神大震災の時には、あまりの被害のすさまじさに、心的外傷体験にいたるまでのショックを受けてしまった学生ボランティアや、高揚感から昼夜の別なく働き、"燃えつき"てしまった若い教師の話を、私は聞かされたことがある。(p.31)

●1970年にペルーのユンガイで発生したマグニチュード7.7の大地震では、アンデスの氷塊が滑落して大なだれを起こし、5万人以上の犠牲者がでた。文化人類学者らの現地調査によれば、この被災地域には、もともと人種間の対立があったり、貧富や階層の格差があって、しばしば社会的な葛藤を生じていたのだが、地震直後は、貧しいインディオの人びとが自分たちの乏しい食料を避難所に届けたり、富めるものが貧しいものにさまざまな支援をする光景が見られた。(p.46)

●阪神大震災の時の例ではガス・タンクが爆発するというデマが流れたことがある。このようなデマも危険ではあるが、時に、さらに危険度の高いデマが流布して、悲劇的な惨事が引き起こされることがある。災害によって発生したストレスを、スケープゴートに対する攻撃によって解消しようとするのである。スケープゴートとは、"いけにえの山羊"という意味で、ストレスや攻撃のターゲットとして迫害や虐殺を受ける差別された少数者や弱者のことである。(p.123)

●生存者を、災害を生きのびたサバイバーととらえるか、被災者ととらえるかのちがいは、あたかもグラスにビールが半分ほどになった時に、まだ半分もあると考えるか、もう半分しかないと考えるかのちがいにも似て、生存者の人生に、生きかたの上で大きな差異を生みだす。(p.152)

●災害に対する脆弱性(ぜいじゃくせい)は、直接的には防災意識や防災対策に依存しているが、より根本的には、それを支える経済の力によって決定されるところが大きい。阪神大震災で私たちが目撃したのは、倒壊した古いビルや老朽化した木造家屋とは対照的に、新しく建てられたビルや木造住宅の頑健さであった。直下型地震で、死者の多くが圧死によるものであったことを考えると、早朝の5時46分に、どのような家で眠っていたかが、生死を分けたと言えるだろう。(p.159)

●世界の海難史上で最大の死者をだしたのはタイタニック号の遭難であるが、2番目は、1954年9月の洞爺丸(とうやまる)台風(台風15号)による海難事故である。当時、青森と北海道の函館の間を往復していた青函連絡船は、人や貨物だけでなく、船内の引きこみ線に列車も載せて運んだ。~(中略)~その最新鋭の花形であった洞爺丸と、ほかの連絡船4隻が沈み、1447人が死亡した。そのなかで最も大きな犠牲をだした洞爺丸は、乗員・乗客1314人のうち1155人が死亡している。洞爺丸に乗船していた人びとの死亡率は、88パーセントであった。~(中略)~そのなかの一人である押沢茂孝(当時50歳)は、函館市立柏野小学校の教頭で、洞爺丸の3等船室にいた。彼は次のように語っている。「私は最後まで安心感があった。それは第一に船が座礁したことからこれは海岸が近いということも知った。第二に場所が自分の知っている七重浜(函館港内-引用者注)だということ第三にブイ(救命胴衣-引用者注)をつけるとき衣類を全部着てクツのヒモもしめ直し、こうした場合の十分な身支度をしたという自信があった。それに私は多少水泳の心得があったことも水に対する恐怖心を除いた」(p.161)

●生きたいと強く希望することは、生き残りのための十分条件ではない。生きたいと強く願えば、かならず生き残れるというものではない。けれども、生きたいと欲し、けっして諦めないことは、生き残りのための必要条件である。そのような強い意思がないと、絶対絶命の状況から生還することは難しいだろう。(p.171)

●同じようなことは、1906年4月の、サンフランシスコ大地震の際にも起こっている。当時、サンフランシスコは、アメリカ西海岸最大の都市で、カリフォルニアの政治・経済・文化の中心であった。しかし、マグニチュード8.3という巨大地震により、この都市の機能が破壊され、それまで果たしてきた政治・経済における中心的な役割を果たせなくなってしまった結果、カリフォルニアの中心は南下し、ロサンゼルスへと移っていった。(p.201)

●スコピエ市と対照的であったのは、1964年の3月に起こったアラスカ地震で大きな被害を受けたアラスカ州のシュワード市である。地震は、アラスカ州の最大の都市であるアンカレッジ近くを震源とする、マグニチュード8.5という巨大地震であり、アンカレッジの外港として、真冬でも凍らない不凍港をもつシュワード市は、鉄道やハイウェイの起点として交通の要(かなめ)の位置にあった。~(中略)~地震による地盤崩壊で、港湾施設は完全な機能不全におちいり、石油貯蔵タンクが破壊されて、漏れ出たオイルに引火した火は大火災となって、この市を焼きつくした。そして、大津波が襲ったのである。シュワード市は壊滅した。(p.204)

●1755年の11月1日。ポルトガルの首都・リスボンのまちなかは、諸聖徒日のミサに参加するため教会へと集う人びとであふれていた。~(中略)~この日、マグニチュード8.5の超巨大地震がこのまちを襲った。午前9時半頃、最初の地震がやって来た。ミサの祈りをささげていた人びとの上に、教会堂がくずれ落ち、市内の多くの建物が倒壊した。この地震で、市内の建築物の85パーセントが被害を受けて、2万人が圧死したと言われている。そのほぼ2分後、2回目の地震がやって来た。この地震は、すでに亀裂が走り脆弱になっていた建物のほとんどすべてを破壊して、大火災を発生させた。この火災によって数千人が焼死した。リスボン市はテージョ河という大河が海へ注ぐところに位置している。市民は、この河岸近くに避難の場所を求めたのである。正午頃に、3回目の地震が襲った。その後、10メートルを超す大津波が、3回にわたって来襲した。この巨大津波は、火災をさけて河辺の空地に避難していた5万人を、一瞬にして飲みこんだのである。(p.213)
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