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樋口晴彦著『組織行動の「まずい!!」学』
副題は「どうして失敗が繰り返されるのか」です。「どうして、こうも失敗(過ち)が繰り返されるんだろう?」と思う、今日この頃です。



●事件後に三菱重工側が製造部門の課長・係長を対象に実施したアンケートでは、「守るべきルール/マニュアルが多すぎ実情に合わない」という結果が浮かび上がった。必要性の小さい、あるいは現場の実情から乖離(かいり)した規則類が増えたことで、作業現場の中で規則を遵守しようとする意識が稀薄(きはく)となる「規則過剰症」に陥っていたのである。無意味な規則類を大量に押し付けられれば、現場としてもたまったものではない。その結果、「上に方針あれば、下に対策あり」の言葉が示すように、現場の「運用」として、密(ひそ)かに規則違反が広がることになる。当初は不必要な規則に対してのみ違反が行われるが、いずれは絶対に守らなければならない安全規則にまで違反が及ぶ。これは、規則違反が日常茶飯事となることにより、規則それ自体の「重み」が失われてしまうからだ。規則やマニュアルを無用に増加させると、かえって現場の規範意識を後退させる危険性があることに注意が必要である。(p.41)

●ちなみに、リスク管理の関係者の間では、「ISOを取得した企業でおかしな事故がよく起きる」と密かに囁(ささや)かれている。これは、ISO取得の際にコンサルタントの薦(すす)めで見栄(みば)えのよい膨大なマニュアルを作成した結果、「規則過剰症」を誘発してしまうためだ。前述の社内アンケートでは、「会議・報告が多く、本来の現場管理・生産技術に傾注できない」、つまり現場監督者が、他部門との調整や書類作成などの事務作業に忙殺されている実態も明らかとなった。必要のない規則が多すぎる上に、監督者が現場を見回る時間的余裕もないとなれば、監督が形骸化するのはむしろ当然のことだろう。(p.42)

●つまり、組織内で文書類が必要以上に増加するのは、本来は現場を支える立場であるはずの総務・企画部門が、逆に現場に対して支配的な傾向を強めている証左である。文書が分厚いほどよいという文系的価値観、いわば「『紙』様信仰」を現場に押し付けているのだ。もしもあなたの会社で、業績が下降しているのに文書ファイルの冊数が年々増えていたとしたら、「まずい!!」と感じて早めに手を打つべきだろう。(p.42)

●結局のところ、多数の人々が集まって議論するのは、その集団内の「和」を形成する上では有用だが、効率性の面では問題があるということだ。変化の少ない安定した時代ならばゆっくり議論を重ねてもよいが、スピードが重視される革新期には、その対応の遅れが致命傷となりかねない。例えば、現代のIT産業には信長型の経営者が少なくないようだが、生き馬の目を抜く業界で生き残るには、判断の速さが不可欠なためだろう。(p.47)

●このような状況は、集団内の「和」を重んじる日本特有の問題かと思っていたが、どうもそうではないらしい。『Groupthink』の著者I.L.ジャニスは、凝集(ぎょうしゅう)性が高い集団において、集団内の合意を得ようと意識するあまり、意思決定が非合理的な方向に歪(ゆが)められてしまう現象を「グループシンク」と名付けた。(p.49)

●集団がグループシンクに陥ることを防止する最良の策は、議論の場に「けなし役(Devil's Advocate)」を必ず参加させることだ。どのような意見に対しても批判を提出する役割を、特定の個人にあらかじめ割り振っておくのである。(p.50)

●実は、ブースタの製造元のS社は、この低温がOリングを硬化させる危険性を事前に指摘していた。NASAの規定では、シャトルを打ち上げる毎(ごと)に、関係する製造業者すべての同意が必要とされていたので、本来であれば打ち上げは延期されたはずである。しかし、NASAのブースタ担当者の説得を受けて、最終的にS社が同意書を提出してしまったことが悲劇を招いた。(p.52)

●なお、このグループシンクに関する議論をさらに深化させたものとして、東洋英和女学院大学の岡本浩一教授は、著書『リスク・マネジメントの心理学』(新曜社)の中で、組織の意思決定を誤らせる要因の一つとして「属人的組織風土」を挙げている。その趣旨は、事柄の内容よりも「誰」が提案しているかを重視する属人志向性の強い職場では、上司の提案に対して反対意見を言い出しにくく、組織ぐるみで違反行為が容認される「属人的組織風土」が生じるというものだ。(p.56)

●しかし、移民の国である米国はもちろんのこと、世界の多くの国々は、宗教・民族など様々なバックグラウンドを持つ人々から構成される混合体である。そのように同質性の少ない社会では、日本と違って阿吽(あうん)の呼吸は通用しない。社会契約としての「ルール」やそれに基づく「権限」を杓子(しゃくし)定規に守っていかなければ、世間が回っていかないのである。この点を理解していないと、批判が空回りになるだけだ。(p.60)

●規制緩和の流れの中で航空会社がコスト削減を最優先課題に掲げ、整備業務を人件費の安い海外、特に中国の整備業者に委託するようになったためだ。平成16年には、日航、全日空ともに全整備の3割前後を海外に発注している。(p.74)

●しかも、マニュアル遵守(じゅんしゅ)が基本とされる欧米と異なり、日本では、QCサークル活動のように現場の創意工夫が尊重される風土が存在する。そのため、作業能率の悪い職場環境であれば、何らかの形で効率化を図ろうとするインセンティヴが現場に生じやすい。その行き着くところが、世界に冠たるトヨタ自動車の生産ラインとなる場合もあれば、JCOのように安全対策の破綻(はたん)につながる場合もあり得る。その意味では、改善と改悪は鏡の裏表である。(p.88)

●この松下電器とは対照的に迅速な初動措置で高く評価されたのが、参天製薬の危機管理である。平成12年6月、参天製薬に対して「2000万円を支払え。この要求に従わなければ、劇物を混入した目薬を店頭にばらまく」という脅迫状が届いた。~(中略)~家庭用目薬は同社の総売上の1割を占める重要商品であり、特に事件が発生した6月は水泳シーズンの初めで目薬の消費が拡大する時期だった。しかし参天製薬では、その日のうちにトップダウンで全品回収を決断し、250万個をわずか2日間で回収して消費者の被害を未然に防止したのである。ちなみに、その数日後に脅迫犯人も大阪府警に逮捕され、事件は無事解決している。この商品回収の関係で、参天製薬には約13億円の被害が発生したと伝えられている。しかし、迅速な対応ぶりにより同社の企業イメージは急上昇し、事件解決後には売上が急拡大した。ちなみに、平成12年度の同社の決算では、この事件にもかかわらず、売上高も営業利益も対前年度比でプラスとなっている。一方、前述の事故対策に松下電器が支出する費用総額は200億円を超えるものと観測されているが、松下側のプラスはほとんどない。危機管理においては、初動措置が迅速に行われるか否かでこれほど大きな差がつくということだ。(p.158)

●神戸市では、阪神・淡路大震災の際に違反建築による建物倒壊が被害拡大につながった苦い経験から、都市計画総局の中に安全対策室を設置し、違反建築の摘発に力を入れていることで有名だ。同室のホームページには「違反建築通報ページ」が設けられ、市民からの通報や内部告発を受け付けている。このページには通報者の氏名等の記入欄が設けられているが、もちろん、通報者の保護のために匿名での通報も受け付けている。(p.171)

●そこで、開発の中途段階で、計画の収支について改めて試算がなされた。すると、今すぐ開発を中止して違約金を支払うほうが、このまま開発を続けた場合よりも損失額が軽微で済むという結論が出たのである。それでも、コンコルド計画にストップがかけられることはなかった。様々な理由が挙げられたが、その根底に見え隠れするのは「もったいない」の心理である。ここまで開発を進めてきたのだから、今さら中止するのは惜しいという執着が関係者の判断を狂わせたのだ。かくして莫大な資金が追加投入され、69年にようやく完成にこぎ着けたが、やはり買い手は現れなかった。採算ラインは250機とされていたが、実際には、開発当事国である英仏の国営航空会社向けにわずか16機を納入したにとどまった。(p.186)

●既に消費されてしまって今さら回収する方途がない資金を、経済学の用語でサンク・コスト(Sunk Cost:埋没費用)と呼ぶ。~(中略)~泣こうが笑おうがサンク・コストが手元に戻ってくるわけではない。サンク・コストはいわば「過去の話」であるので、今後の経営計画について判断する場合には、このサンク・コストを計算に入れてはならない。(p.190)

●したがって、計画が壮大なものであるほど「コンコルドの誤り」が発生しやすい。それまで膨大な資金や労力を投下したという事実の重みが、判断を狂わせるのである。卑近な例として、パチンコのことを考えてみよう。3000円を機械に呑まれた段階であれば、まだ諦(あきら)めがつく。しかし、3万円となるとそうはいかない。「3万円も注(つ)ぎ込んだのだから、もうすぐ大当たりが出るに違いない」という意識に陥(おちい)り、やめられなくなるのが大ハマリの典型的パターンだ。(p.192)

●公認会計士は、監査という公的機能を果たす一方で、その経営の実質は一般の民間企業と変わらない以上、「顧客」である企業サイドに対して営業努力に励まざるを得ない。ここに、本来は企業側を監視する立場であるはずの公認会計士が、企業ともたれ合いの関係に陥りやすくなるという構造的矛盾が生じるのである。(p.197)
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