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川西剛著「知られざる技術大国 イスラエルの頭脳」
この本は、2000年に書かれた本です。少々内容は古いですが、大変参考になります。


●イスラエルで生まれた技術は、すでに、われわれの身近なところで活(い)かされている。一例をご紹介しよう。ウインドウズ・パソコンのユーザーにはすっかりお馴染(なじ)みの、インテルのペンティアムMMXテクノロジ・プロセッサ(97年に生まれたこの世代のプロセッサから、画像処理能力などが、飛躍的に向上した)も、ハイファにある同社のR&Dセンターで生まれたものだし、企業や団体のコンピュータ・システムを、ハッカーなどによる外部からの攻撃から守るセキュリティー・システムの世界標準となった「ファイアウォール」も、チェックポイントというイスラエルの企業が作り上げたものだった。(p.5)

●イスラエルの国土は、日本の四国ほどの面積しかなく、人口は600万ほどである。(p.5)

●イスラエルでは、人口の30パーセント以上が13年以上の教育を受け、労働者人口の17パーセント以上が学位を取得している。修士号、博士号を取得し、科学分野の書籍を上梓(じょうし)している人の数は、総人口の15パーセントにものぼると言われるほどだ。イスラエルは、100人に1人が医者で、国民1人当たりの割合では世界一の医師大国でもある。約600人のノーベル賞受賞者のうち、実に約20パーセントはユダヤ系なのである。(p.16)

●そういえば、ユダヤ人の優秀さに関して、ある人からこんなジョークを教えてもらったことがある。あるとき天国で、人間の5体で一番重要なのは何かという議論が始まった。モーゼは、それは頭だと言った。違う、それは心だとキリストが言い返すと、いや胃袋であると、マルクスが割って入った。それを聞いたフロイトは、人類は再生産されないと滅亡するから、胃袋の下の器官(生殖器のこと)こそが大事であると言った。黙って聞いていたアインシュタインが最後に口を開いた。みんな間違っている、すべては相対的である、と-。お気づきと思うが、このジョークに登場するのはみんなユダヤ人で、彼らが人類の英知の開拓にいかに貢献してきたかを語るという仕掛けになっている。(p.17)

●ご承知のようにイスラエルが誕生したのは1948年で、それまでユダヤ人には国というものがなかった。約3000年前にダビデ王のもとに栄えたイスラエル王国があったが、それが滅亡して以来、自分たちの国を持ち得ず、世界をさまよう流浪(るろう)の民となった。(p.18)

●定住地を持てなかったユダヤ人にとって、"いざというとき持って逃げられる頭脳"こそが一番の財産になったのだ。だから、彼らは知識に対する投資を惜しまないのである。「教育ママ」と言うと、日本では子どもに勉強を無理強(じ)いする悪い母親のイメージがあるが、本来的には子どもの未来のために熱心に教育する母親という意味で、英語では「ジューイッシュ・マザー」と言う。ユダヤ人のお母さんである。英語にそういう言葉があるほど、ユダヤ人は教育熱心なのだ。(p.19)

●もともとユダヤ教では「100パーセント確かでなければOKしてはいけない」という教えがある。「これがルールだから、そうしろ」と言われても、すぐに「はい」と従ってはいけない。「ルールは人間が作ったものなのだから、もし少しでも疑問があるなら、なぜそうなのか、必ず答えを得るように」と教えられるのだ。ユダヤ教では、常に「クエスチョン、クエスチョン、クエスチョン」で、「絶対的価値を疑え」と奨励している。それが、ユダヤ人の普通の勉強の仕方だ。またユダヤ教では、グループで行動するのではなく、自分独自の考えを持つようにと教えられる。物心ついた頃からずっと、他人がやっていることを見たら、それとは違うことをするようにと言われ続けて育つのである。こうしたユダヤ教の教えこそが、ユニークな発想の原点になっている。(p.23)

●イスラエルの全人口はわずか600万人余り。東京都の半分程度しかいない小国なのである。(p.38)

●<※ユダヤ人とは>
①ユダヤ教の慣例法規ハラハーの定義によると、ユダヤ人とはユダヤ人の母親から生まれた者、またはユダヤ教に改宗した者。
②イスラエルへの移民条件を定めた「帰還法」によると、配偶者が両親、祖父母のいずれかがユダヤ人なら、ハラハーによればユダヤ人でない人もイスラエル市民として受け入れられる。(p.41)

●ファイアウォールというのは、インターネットと企業のコンピュータ・システムなどをつなぐ出入口-デジタル化した音声や映像を振り分けるルーターという中継器-の下に設置し、外部からの不正アクセスを防御するとともに、内部からの不用意な情報流出を防ぐためのハードとソフト両面による防御システムである。このシステムを世界で最初に開発し、「Firewall-1」の名で世に送り出したのが、イスラエルの「チェックポイント」という会社だった。(p.47)

●ネット・セキュリティにおける暗号化の最大の役割は、"認証"と"秘匿(ひとく)"である。"認証"というのは、ネット上での電子商取引に当たって、人やモノやマネーがホンモノかどうかの「真正性」を保証し、ニセモノを排除すること。また"秘匿"とは、クレジットカード番号などの個人情報や取引内容などの重要情報が盗まれることのないように、がっちりガードすることを言う。(p.53)

●もともとイスラエルは「米国の51番目の州」とか「米国の飛び地」と言われるほど米国と密接な関係にある。経済的には完全に米国の経済圏で、米国のシリコンバレーとイスラエルのハイテク産業は事実上リアルタイムで同時進行していると考えても間違いではない。だからハイテク情報の収集には、シリコンバレーよりイスラエルに行ったほうが、むしろ効率的なほどだ。なぜなら、同じ1週間滞在する場合、シリコンバレーではせいぜい5~6社しか訪問できないが、イスラエルなら10~20社は楽に訪問できるからだ。(p.73)

●イスラエルのハイテク・ベンチャーに共通するのは、アイデアやコンセプトは素晴らしいが、それを事業化する能力に欠ける、という点である。国内市場が小さく、量産型のモノ作りを経験していないため、マーケティングが決定的に苦手なのである。日本はこの逆で、ゼロからの開発は不得手だが、量産型のモノ作りならお手のものだ。(p.76)

●ユダヤ社会では、失敗はダメージにならない。ユダヤ人は、たいてい失敗してもやり直せるタフなハートを持っているし、社会には、やり直しを許容する寛容な土壌がある。それだけに、事業を手伝ってくれるパートナーの存在がいっそう重要になるのだ。(p.77)

●米国企業の幹部に聞いた話だが、その人によれば、「新規プロジェクトを進めるために技術者を雇った場合、イスラエルではプロジェクトが終了しても8割は残るが、シリコンバレーではプロジェクトが終了する前に8割がやめる」という。「同じ能力なら、秘密保持に有利な分だけ、イスラエルのほうがいい」というわけだ。イスラエルの技術者が、一般にそれほど厚い忠誠心を持つメンタリティーの持ち主かどうかは意見の分かれるところだが、実際にそうした「秘密保持」というメリットを評価して進出する企業もあるということだ。(p.79)

●私は、エルサレムにあるインテルの第1工場「FAB8」に行ったことがあるが、ここには当然のように核シェルターがついていた。~(中略)~核シェルターを装備してまで彼の地に工場を作る度胸は、日本の企業には、まだないようである。(p.80)

●たとえば、建国の父である初代首相、D.ベングリオンは、「境遇を運命と諦(あきら)めないで、創意によって克服しよう。創意こそは神からのいちばんの贈り物だ」と言って、1954年に首相の座を退(しりぞ)くと、その言葉を実践するため、自らネゲブ砂漠のキブツに移り住み、砂漠の緑化に挑戦した。(p.88)

●ユダヤ人は日常生活においても、外ではとても攻撃的な面を持っている。それは、たとえば会議などの場になると、てきめんに出てくる。相手を蹴落としてでも勝つという気概で、議論を仕掛けてくる。その一方で、ひとたび家庭に入ると、とてもアットホームで、優しい姿を見せるのだ。人間、誰しも公私を使い分けるが、ユダヤ人の場合はその差が極端だ。外で攻撃的な分、内ではよけいに優しくなれるのかもしれない。(p.107)

●これは、ユダヤ人の考え方を知るのにかっこうのエピソードだ。彼らは自分の頭だけを頼りに一人でやるとか、少人数でやるのは得意だが、みんなで協力して一緒に何かを作るというのは苦手だ。そんな国民性を持つ彼らに向いているのは、やはり製造より開発だろう。イスラエルは、ハード面でも人材面でも、自動化とか量産に適した場所ではないのだ。(p.111)

●いまやイスラエルは、世界の「頭脳」としての役割を率先して引き受けようとしている。開発に国家の未来を託すという姿勢は極めて明快だ。一方、これまでハイテク王国を自認してきた日本は、いつの間にか開発の面で米国やイスラエルに遅れをとり、気がつけば、なんとも中途半端な地点に立っているように思えてならない。日本は「国際分業とは何か」を、いま一度本質的に考え直す時期にきているのではないだろうか。(p.115)

●米国がディベート社会として有名だが、イスラエルはこれに輪をかけて凄い。たとえば私が社外役員をしている米国の半導体装置メーカー、アプライド・マテリアルズという会社は、社長と副社長一人がユダヤ人で、いざ役員会ともなれば、それはそれは凄まじい議論が展開される。私は東芝で10年務めたが、役員会というのは沈黙の場だった。(p.144)

●ユダヤの思想では「100パーセント賛成という議論は間違っている」とされる。神ならぬ人間がやっていることなのに、100人が100人、みんな同じことを言うこと自体がおかしい、という発想である。だから、最初に異なる意見が10あれば、とにかくその10の意見を戦わせてみる。すると、それぞれの意見のなかに一つ、また一つと欠点が見えてくる。進むべき確かな道を探そうと思ったら、そうやって議論を重ねて最善の意見に集約していく。それが、神ならぬ人間にできる最善の方法だと信じているのだ。(p.146)

●彼らが徹底的に議論好きなのは、こうしたユダヤ人の思想に根ざしたものだ。ユダヤ人は自由な議論のなかから正しい結論を導き出そうと最大限に努力する。そのために、教科書どおりではない意見を本当に自由にぶつけ合う。こうした個性的なアイデアの競争が、イスラエルのハイテク産業の優れた技術開発の源泉になっているのは間違いない。その点日本社会は、ユダヤ社会とは対極にあると言っていいほど議論を好まない。最初から経営トップや主流派の意見で一つにまとめようとする。~(中略)~結果、厳しい議論にさらされることのないヤワな意見が、堂々と社の命運を握ったまま歩き出す。うまくいけばいいが、失敗することも多い。(p.147)

●ユダヤ人が経営幹部にいても、米国企業である場合は、もう少しバランス感覚がある。アプライドの場合、社長と副社長はユダヤ人だが、会長は違う。アングロサクソン系で大所高所からの戦略眼を持つ人だから、「まあまあ、そう言わずに」と物事を丸くおさめる術を心得ている。~(中略)~米国の強さの本質は、実はこのように優れたバランス感覚にこそあるのだ。ユダヤ系の発想の斬新さや起業にかける情熱と、それをうまくマネジメントするアングロサクソン系の優れた戦略眼を併せ持っている。米国は、移民のエネルギーを国の力に変え続けている多民族国家であり、こうした多様性は彼ら独自のものだ。その点、日本やイスラエルはモノカルチャーで、それぞれが単一の思考パターンで凝(こ)り固まっている。それが強さだとも言えるが、同時に弱さでもある。(p.149)

●閃きは、情報に埋もれているだけでは、まず得られない。大量に送られてくるe-メールなどは、タイトルだけ見て、不要と思われるものはどんどん捨ててしまえばいい。あんなものをまともに全部読んでいるようでは、絶対に閃きなど生まれない。無駄な情報は捨てないといけない。私たちの脳細胞の処理能力には限度がある。情報を足し算で次から次へとストックしていったら、残念ながらパンクしてしまう。足し算するだけでなく、引き算もしないといけない。そうやって、つねに脳細胞の処理能力を高い状態に保っておく。そのうえで、仕事を離れて身心のリフレッシュを心がける。気分転換は重要である。(p.152)

●その点、イスラエルの企業は、日本人の感覚からすれば、まだ開発が完了したとは思えないような段階で、「できた、できた」と言って大騒ぎしてしまうケースがとても多い。商談での彼らの押しの強さは強烈だから、完成度を十分に吟味(ぎんみ)しないで契約を進めると、あとでえらい目に遭う。「日本での販売代理店契約を結んだはいいが、実際に発売できる状態になるまでに1年以上かかった」-。そんな話はザラである。(p.169)

●民生機器は、理屈ではなくて感覚の要素が強い。その点、コンピュータや情報通信は、二進法的なオンかオフかだけの問題と考えられ、感覚の入り込む余地がない。家電製品で成功するには、どうしてもオンとオフの中間に存在する微妙なニュアンスやデリカシーが必要になるのだ。残念ながら、アメリカ人はそういう神経を持ち合わせていない。また、こうした感覚はヨーロッパの人たちにも欠けている。(p.188)

●ユニークなところでは、ハイセンスというベンチャー企業がSIDS(乳幼児突然死症候群=Sudden Infant Death Syndrome)用の警報装置を作っている。この装置は、コントロールユニットと、それに接続した特殊な圧力センサー(ベビーベッドのマットレスの下に敷く板状のもの)からなり、赤ちゃんの呼吸が20秒以上停止するか、もしくは呼吸が1分間に10回以下に落ちるとランプで警告を発し、その後大きなアラーム音が鳴るというものだ。~(中略)~SIDSの悲劇は、赤ちゃんが眠っているものと思い込んで、親や保育者が異変に気づかないことにある。気づいたときには、すでに呼吸停止から何時間も経過しているという場合が多い。この装置は、手遅れになる前に異変を察知し、適切な医療措置がとれるように考えられている。一般に乳幼児の呼吸停止は、20秒程度で発見すればほとんどのケースで蘇生し、助かると言われている。この装置は7万円程度で市販されているので、医療機関だけでなく、個人でも利用できる。(p.230)
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