zuKao


プロフィール

zuKao

Author:zuKao



最近の記事



最近のコメント



カテゴリー



月別アーカイブ



リンク

このブログをリンクに追加する



山田英夫著「なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編」
この本は、内田和成さんのTwitterで知り購入しました。山田英夫さんの本は、以前に「ビジネス版 悪魔の辞典 増補改定版」を読んだことがあり、爆笑しました。今回の本は、とても真面目です。


●近年、ビジネスモデルのイノベーションが求められてきた。製品のイノベーションだけでは、長期にわたる競争優位を維持することは難しくなってきたからである。各社の技術レベルが拮抗し、差別化商品・技術を出しても、類似の技術により同質化競争をしかけられ、究極的には価格競争になり、儲けがなくなってしまう例が少なくない。(p.14)

●第一の方法が難しいとすれば、他社にあるヒントを手掛かりにビジネスモデルを構築していく方法がある。「イミテーションはイノベーションより数も多く、現実に企業に利益をもたらすケースが圧倒的に多い」ことは、セオドラ・レビットによって既に指摘されており、目新しい見解ではない。その後も、多くの研究者が模倣の有効性を述べている。(p.15)

●以上のような様々な定義があるが、ビジネスモデルを真正面から研究したアフアの定義が最もシンプルでわかりやすいため、本書ではこれをベースに、ビジネスモデルを「儲ける仕組み」と定義することにする。(p.18)

●また、UCLAの教授から学んだ「成長の速度」の重要性も感じた。年率50%で成長すると、社内の管理体制がついていけず、また一定規模を越えると、大企業が参入してくるということである。ベンチャーの場合には、「抑制された成長」が必要であることを改めて学んだ。事業売却後、ゴールドマン・サックスにいったん戻ったが、再度独立し、2001年「スター・マイカ株式会社」を設立した。ちなみにスター・マイカとは、鉱物の「雲母(うんも)」という意味である。(p.24)

●以上のような背景から、スター・マイカでは戦略として、「何をしないか」を明確に定めている。第一に海外には進出しない。これは前述したように賃借人の権利の弱い国では、スター・マイカのビジネスモデルは機能しないからである。第二にデベロッパー事業には手を出さない。そして第三に大規模集中投資はしない。(p.33)

●レベニュー・マネジメントとは、重要を予測して価格を変化させながら、販売量と販売単価の積であるレベニュー(収入)を極大化することである。米国の航空会社が発祥であり、固定費比率の高いホテル業界などでは定着している。「イールド・マネジメント」と呼ばれることもある。(p.45)

●ゴア社は新ポリマーであるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の商品化を模索するために、1958年にアメリカ人のゴア夫妻によって設立された。ゴアが発見した延伸多孔質PTFE(ePTFE)は汎用性に富むポリマー素材として、ファイバー、シート、フィルム、テープ、チューブなどの様々な形で用途を広げていった。(p.50)

●日本では、米国ゴア社と日本の潤工社(特殊電球の皮膜メーカー)との50対50の合弁企業として、1974年にジャパンゴアテックスが設立された。(p.51)

●ジャパンゴアテックスは50対50の合弁会社として運営されてきたが、日本側の親会社である潤工社との取引はほとんどなく、95%が米国ゴア社との取引であった。今後の展開を考える上で、合弁を維持するよりも、米国ゴア社と一体に運営する方が良いと考え、2009年に合弁は解消され、ゴア社の完全子会社になり、2011年には社名を日本ゴアに改称した。同時に、ゴアテックスというブランドが多分野に使われ、ブランド拡張が行き過ぎたことから、ゴアテックスというブランドは、ファブリクスに特化することになった。(p.53)

●KOMTRAXの仕組みは、決してグランドデザインが先にあって作られたものではないが、その進化・発展プロセスは非常に興味深い。そして、コマツの利益率向上の本当の理由が、予防保全と呼ばれる"壊れる前日に訪問する修理"にあることを示し、そこに日本のメーカーが行うサービス事業のモデルがあることを述べていこう。(p.65)

●KOMTRAXは、建機に取り付けた装置(遠隔システムコントローラ、GPSアンテナ、センサー通信モデム)と管理サーバから構成される。建機からのデータは1日1回送られる。建機の中にある複数のコントローラが通信でつながれ、それにより車両内情報を取り込み、GPSで位置情報を検出し、通信衛星や携帯電話回線で日本本社のサーバーへ送信し、そこで加工された情報がインターネット経由で、顧客、代理店、現地法人に配信されるシステムである(図表2-7参照)。KOMTRAXシステムは、国内では2000年から開始し、その後米国などでは異なる仕組みで運用していたが、2006年に全世界でアプリケーションを統一した。当初は、地球上すべての地域をカバーできる衛星通信を介して情報をやりとりしようと考えていたが、中国やロシアなど簡単に認可が下りない国もあり、最近では地上波の無線通信がメインになってきている。国内ではNTTドコモのFOMAの電波、山の中では衛星の電波を使っている。また中国では規制で衛星が使えないので、携帯の電波を使っている。(p.66)

●コマツは1990年代初め頃から、平塚の研究所でKOMTRAXの研究を始めていた。しかし当時のGPSは20万円もしたので、この案は実現しなかった。90年代後半にカーナビが普及し、GPSが安く使えるようになった。また、データ通信のインフラが整った。そこで研究所の中で、KOMTRAXが開発テーマに復活した。しかしながらKOMTRAXのビジネスモデルは描けなかった。特に、「誰から金をとれるのか?」が描けなかった。その後2000年に、郡山でビッグレンタルというレンタル業を営む若い社長が、「100台買うから持って来て欲しい」とコマツに依頼した(現在ビッグレンタルは、コマツのレンタル子会社と合併している)。彼は、GPSとセンサーでレンタル機械を管理しようとした。自動車は自らの力でガソリンスタンド(SS)に行けるが、燃料が少なくなった建機は、自力ではSSには行けず、燃料の方から行くしかない。そこにレンタル会社の商売があった。またこの社長には、「故障の場合、どこに機械を取りに行けばよいか。建機の稼働率も知りたい」というニーズもあった。顧客がついたことで、KOMTRAX事業化のゴーサインが出た。(p.66)

KOMTRAXの開発に際しては、特に他社のベンチマークはしなかった。しかし後で調べてみると、航空機エンジンなどに、似たようなモデルがあることがわかった。コマツの坂根正弘会長は「利益率が多少悪くなっても目をつぶるから、コマツの負担でKOMTRAXを標準装備にしよう」と決断し、KOMTRAXを無料で組み込んだ。坂根氏は、米国でサービス事業の経験があり、こうした発想が出てきたと言われる。KOMTRAXの費用は約10万円かかるが、すべての機械に組み込んだ。1000万円の建機で10万円のコストアップは負担が大きいが、その上昇分は価格に上乗せしなかった。(p.68)

●KOMTRAXという名は、米国駐在の社員が命名した。「KOMTRAXをオープンにすると、競合企業を刺激してしまう」という社内の懸念もあったが、競合より先にPRしてコマツの価値を高めようということになった。実際同じようなシステムを、競合の日立建機も始めていた。しかし日立では、2007年8月までは有償オプションであった。同じ頃にキャタピラーも、有償でスタートしていた。(p.68)

●もともとKOMTRAXは、盗難防止のために開発された。かつて、盗まれた建機で銀行のATMを壊して現金を奪う事件が頻発していた。日本では、建機はよく盗まれた。その理由として、第一に建機の鍵が数種類しかなかったので、盗もうとすれば簡単だった。第二に盗品が高く売れる状況があった。~(中略)~当初のKOMTRAXはGPSのみで、建機の場所しかわからなかった。しかし、夜中にコマツ社内の端末画面上で建機が時速40キロメートルで動き出したら、これは盗難に違いないと判断して警察に連絡した(建機は時速40キロでは自走できない)。盗難機は、港から東南アジアや中国に送られることが多く、警察が港に先回りし、逮捕した例も少なくない。この結果、コマツの建機は盗難率が低くなり、建機の保険料も下がり、顧客メリットが大きくなった。現在のKOMTRAXには、作動時刻を設定できるエンジンロック機能があり、たとえば夜8時から朝5時までロックをかけると、この間はエンジンが始動できなくなり、ロック中にエンジンを始動しようとすると、アラームを発する。(p.69)

●中国では建機の9割は個人で購入されており、その個人が現場に貸し出している。しかしお金があっても、代金を払ってくれないケースが多かった。そこで2004年にKOMTRAXを導入した。KOMTRAXには、遠隔操作でエンジンが停止できるシステムがついており、催促をした後にも支払いがない顧客に対しては、エンジンを止めることが有効であった。(p.70)

●KOMTRAXによって、部品の交換時期も事前にわかり、故障する前にチェックに行くことができる。たとえばエンジン水温の上昇は重大故障の前兆であるが、その場合はサービスマンが現場に急行し、故障を未然に防止できる。代理店は管轄内の機械に関して毎朝情報をチェックし、顧客が気付く前に顧客を訪問している。こうした保全方法を「予防保全」と呼んでいる。この業界には、メンテ部品を安価で提供するサードパーティが多く、価格勝負になったらコマツは勝てない。しかし顧客にとっては、代理店が「壊れる前日」に来てくれれば、たとえコマツの純正品を定価に近い価格で買っても、トータルコストは安くなる。予防保全が機能すれば、サービス、部品はコマツの純正品になる。すなわち、R&M(Repair & Maintenance)の分野で、アウトサイダーを排することができる。コマツは交換部品で3000億円の売上を上げ、1000億円の利益を上げている。さらに最近では、純正部品にICタグをつけ、取り外されるとわかる仕組みも作っている。予防保全は、顧客、代理店、コマツの三者がともに得をする仕組みで、顧客満足の向上だけでなく、代理店、コマツの効率化にも貢献している。(p.71)

コマツは、もともとデータをとるのが好きな会社であり、データに基づいて意思決定する風土が根強い。データを重視する会社で、売った後どうなっているのかの情報をつかむのに、KOMTRAXは最適であった。(p.73)

●第三に、コマツの企業規模がKOMTRAXの導入にちょうど良い規模であったことが挙げられる。建機業界で世界一位のキャタピラーは、コマツの約2倍の売上高を持ち、特に海外では代理店の力の差が大きい。またキャタピラーは社員数が多く、投資規模も大きい。かつてキャタピラーは代理店との間でSIS(戦略情報システム)を運用していたが、これはインターネットが普及して不要になった。それによる除去損は少なくなかった。それだけに、もしKOMTRAXのようなシステムが入ると、過去の投資が無駄になったり、強い代理店を多数持っていることが、逆に重荷になる可能性がある。こうして、キャタピラーに比べて数が少なく、相対的に弱かった代理店が、KOMTRAXを使うことによって有利になったのである。(p.74)

●今後のKOMTRAXのキラー・アプリケーションとして、無人ダンプが挙げられる。遠隔地の鉱山では、環境が劣悪で工賃が高く、無人ダンプがないと工事できない。とくに露天掘りの鉱山で24時間動き続けるダンプトラックは、高度な運転技術が求められ、かつ危険も伴うため、高額報酬でも運転手の確保が難しい。無人ダンプは1台5億円と高額だが、「運転手を一人減らせる」という考え方ではなく、厳しい環境下でも無人操作できる点を訴求している。(p.76)

●コマツのKOMTRAXの記事を見て、富士ゼロックスのカスタマーサポートの担当者が、コマツに話を聞きに行ったこともあり、両社で研究会を持ったこともある。(p.77)

●たとえば、単なる紙詰まりはリモートでわかるようになり、サービスマンが駆けつけないで済むようになった。サービスマンが駆けつけるコストは、富士ゼロックスにとって大きなコストであった。また消耗品がなくなる前に補給に行けるようになり、パーツ交換時期も先に分かるようになった。こうして顧客満足を下げずに、サービスマンが現場に行かなくても良いようになり、従来はトレードオフの関係にあった富士ゼロックスのコストダウンと、顧客サービスのレベルアップを同時に実現できるようになった。また、出力枚数のデータなどから、機器の最適配置の提言(最適化コンサルティング)もできるようになった。当時米国では、機械を売っているメーカーがコンサルをすると、「売らんかな」と思われ敬遠された。そこで米国ゼロックスでは、「最適化のコンサル」は断念し、「アウトソーシング」へと事業は進んでいった。他方富士ゼロックスでは、コンサルと営業は両立し、機械を購入してくれた顧客に対しては「最適化コンサル」を無償で行っていた。(p.78)

●一足先に所有と運営を分離した駐車場大手、パーク24のタイムズ事業の歴史を見ると、売上を減らさないようにしながら受託事業を広げていった過程を見ることができる。現在のパーク24の事業から、発祥事業が駐車禁止の看板の販売業であったことは、想像できないかもしれない。(p.79)

●星野リゾートはこれまで、リゾナーレ小淵沢、アルツ磐梯、アルファリゾート・トマムと破綻したリゾート、いづみ荘、白銀屋、有楽と一連の老舗旅館の再生事業を行ってきた。2005年にはゴールドマン・サックスと提携し、アセット・マネジメント会社を合弁で設立し、旅館・リゾートホテルの再生事業に本格参入した。この再生事業では、星野リゾートがこれまで培ってきた旅館やホテルの運営ノウハウを、ゴールドマン・サックスが資金をそれぞれ提供し、アセット・マネジメント会社から総支配人を派遣、既存の経営陣・社員と共同で再生に取り組むことを基本にしている。(p.81)

●星野氏がホテル学を学んだ米国では、ホテルやリゾート施設は、所有と運営が分離している所が多く、日本でもいずれそうした時代が来ると考えていた。(p.82)

●2001年に星野が経営を引き継ぐと、まずはコンセプト作りから始めた。コンセプトはトップダウンで決めるのではなく、20歳代を含む公募の従業員からなる委員会で作られた。一番頭を悩ませたのがターゲット設定であり、旧経営陣時代の20~30歳代の若いカップルとするか、ファミリーをターゲットとするかの2案が浮かんだ。(p.82)

●星野リゾートは、地域の特性・文化を生かした「星のや」、小規模の温泉旅館を中心とした「界」、そしてファミリー向けリゾートの「リゾナーレ」の3つのブランドを持っている。メインターゲットは、所得の高い専門職(自分で休みが自由に取れる人)と経営者である。(p.83)

●また星野グループでは、女将に依存しない仕組みをとっている。通常の旅館では、女将は年中無休で働いており、旅館運営の中心である。しかし星野では、マルチタスク化(多能工化)によって対応しようとしている。(p.84)

●新しい事業を模索するために市場を見ると、当時から街には時間貸し駐車場が存在していたが、1時間単位で貸す駐車場が圧倒的に多く、わずか15分止めても、600円(当時)払わなくてはならないという消費者の不満が強かった。そこでパーク24は、30分単位で100円から課金するタイムズ事業を1991年から始めた。(p.88)

●国も違い、製品も違うが、「顧客が××について考えなくて良い仕組み」は、GEによって既に具現化されていた。GEのウェルチ会長は、1997年のアニュアルレポートで「グローバル・サービス・カンパニー」を唱え、サービス型のビジネスモデルへの転換を図ってきた。GEは、航空機エンジンや病院の画像診断装置、発電機タービンに関して、過去の「売り切り」スタイルから、サービス中心のビジネスモデルに切り替えた。(p.97)

●そして次の段階では、競合企業のエンジンを含む航空機エンジンのメンテナンス業に本格的に進出した。自社製のエンジンには多数のセンサーと発信システムを組み込み、航空機が飛行している間にエンジン・データをリアルタイムで地上に送れるようにした。不具合が検出された場合には、エンジンを搭載したままで対処ができ、航空会社にとっては、航空機から取り外してオーバーホールする頻度が減り、大幅なコストダウンを実現した。また航空機が着陸し次第メンテナンスに取り掛かれるようになり、航空会社の定時運行率を劇的に改善した。(p.98)

●このサービスにより、トラブルは短時間に解決され、病院は安定的に装置が使え、GEは安定的に保守収入が入るウィン・ウィンの関係を構築した。これをGEではIIS(Intelligent Imaging Solution)と呼んだ。IISによって、故障の8割が瞬時に直せるか、故障原因の早期解明ができるようになった。そして第二段階では、東芝、シーメンスなど競合企業のCT、MRIなどの保守メンテナンスも、リモート・アクセスで引き受けるようになった。さらに、GE自身は作っていない医療機器にもIISを適用するようになった。その結果、病院内のあらゆる医療機器のサポート・サービスが行えるようになり、ついには食事やリネンの配達など、病院内のサービスを含め、全サービスを引き受けるに至った。この結果、医療のハードとサービスの売上比は1対1になり、利益面ではサービスが圧倒した。(p.99)

●スライウォツキーとモリソンは『プロフィット・ゾーン経営戦略』の中で、利益を上げるモデルを、ブロックバスター利益、時間利益、デファクト・スタンダード利益、インストール・ベース利益など22に分類し、それらがプロフィット・ゾーン(企業に高い利益をもたらす経済活動領域)へ移動させる上で有効であると指摘した。しかしこれらは、利益の出ているビジネスモデルを列挙しただけであり、分類の軸も示されていない。また挙げられたモデルがMECE(モレなくダブリなく)であることも保証されていない。同様にジョンソンも『ホワイトスペース戦略』の中で、ビジネスモデルを考えるアナロジーとして、ファストフードのバリューセットから「セット販売型」、マンションの共同所有から「共有型」、パソコンのデルから「中抜き型」、サウスウエスト航空から「サービス削減型」、ガス・電力から「従量制料金型」など19の例を挙げた。彼はアナロジーからビジネスモデルの型を列挙したが、型が19と多すぎ、中にはレベルの異なるものも混じっており、今後いくらでも増えていく可能性もある。そのため本書では、単にモデルや型を列挙していくやり方ではなく、ビジネスモデルの構成要素に立ち戻って、ビジネスモデルを見る視点を探していこう。(p.103)

●顧客への提供価値に関しては、まず顧客の再定義を考える必要がある。ビジネスモデルの発想の原点は、「誰が顧客か」という問いから始まるからである。次に顧客に提供する価値の再定義を考える。最初に主にメーカーのビジネスモデルを考える際に有効な視点として、サービス・ドミナント・ロジック(これについては後述する)を挙げる。(p.106)

ビジネスモデルを構築するにあたって、「誰が顧客か」を決めることは、最初に重要なことである。(p.108)

●顧客が誰かを考えるにあたってマーケティングの分野では、顧客をバイヤー、ぺイヤー、ユーザーに分類する考え方がある。同じような分類として、DMU(Decision Making Unit:意思決定者)、PU(Purchasing Unit:購買者)、CU(Consuming Unit:使用者)という呼び方もある(本書では以下、後者を使って説明することにする)。~(中略)~たとえば幼稚園・保育園に関しては、DMU=母親、PU=父親、CU=子供という家庭が多い。ランドセルやお雛様の場合には、DMU=母親、PU=祖父母、CU=子供というケースが増えている。~(中略)~また生産財の場合には、購買決定プロセスはより複雑であり、ユーザー、バイヤー、アナライザー(技術的な分析をする人)、インフルエンサー(専門的なアドバイスをする人)、ゲイトキーパー(供給者と購買セクションをつなぐ人)、ディサイダー(決定者)という分類がある。(p.108)

●青梅慶友病院では、顧客を「患者様とその家族」と定義づけている。なぜ患者だけでなく家族も顧客と定義されているかは、以下の3つの理由がある。第一に、高齢者専門病院に入院するか否かを決定するのは、多くの場合、本人よりも家族である。認知症の患者の場合、自ら入院の意思決定をするのは難しい。第二に、認知症という病気で一番困っているのは、患者自身よりも介護者であり、その多くは患者の家族である。患者自身は自分が認知症であるという認識がないのも、この病気の特徴である。慶友病院に入院できて助かっているのは、患者本人ばかりでなく、これまで介護疲れに窮していた家族であることが多い。同院には、入院待機者がまだ多数いることから、救わなくてはならないのは、患者とともにその家族である。第三に、病院は法律で広告・宣伝が認められておらず、評判を広めるには口コミが効く。高齢者専門病院の場合、口コミするのは認知症の患者ではなく、家族である。家族の満足が、親戚や知人に口コミを行い、また祖父母から親へと続くリピーターになる鍵となる。青梅慶友病院は患者の家族を顧客と考えたため、以下のような施策をとっている。第一に、東京・新宿にある連携病院の新宿1丁目クリニックでは、高齢者本人だけでなく介護者のためのケアも行っている。これは介護疲れで精神的にまいっている家族を救うためであり、ニーズは強いにもかかわらず、これまで他院にはほとんどなかったものである。第二に、24時間面会可能システムである。~(中略)~第六に、天寿を全うした後、担当した医師、看護師、スタッフの全てが同院からのお見送りに立ち会うことである。(p.111)

●青梅慶友病院は規制の厳しい医療業界にありながら、高い顧客満足を維持し続けている。ここまではよく知られているが、同病院をビジネスモデルの視点から見ると、2つの示唆を与えてくれる。まず「意思決定者と利用者が違う事業のモデル」であり、これについては、フランスベッドが同じような悩みを抱えていたが、画期的な解決案を考えた。次に「なぜ、患者だけでなく家族も顧客なのか」に関しては、テイクアンドギヴ・ニーズの事例にも同じような考え方が具現化されている。(p.113)

●この分野における老舗、フランスベッドでは、介護用ベッドの販売方法について試行錯誤を続けていた。当初は売り切り販売をしていたが、"余命何カ月"と宣告された親に、新品の介護用ベッドは割高であり、購入を控える家族も少なくなかった。そこでレンタル事業を始めることにした。もともとは、購入した療養ベッドが3カ月で不要になった顧客から、ベッドの下取りの相談を受けたのがきかっけであった。しかし事業を始めてみると、判断のできるお年寄りからは、「レンタルということは、お先が短いからか」と心証を害されてしまうことがあった。このように、CUにも配慮しなくてはならないが、DMU、PUが納得できる販売方法も考えなくてはならなかった。このトレードオフに対して、フランスベッドは「新品同様のレンタル」という方法で両者の満足を得ることに成功した。~(中略)~そこで同社は、レンタルバックした商品を洗浄、消毒した上で再塗装し、新品同様の外観に手直しした。(p.113)

●内藤社長はその声にすばやく対応し、1996年エルメッド エーザイという会社を設立した。同社は主に特許切れの薬(ジェネリック薬)を中心とするが、そこに「飲みやすさ」という差別化を加えた医薬品を生産する会社である。同社は自らを、「価値型ジェネリック医療品の提供」と標榜している。青梅慶友病院での経験を踏まえ、湿製錠(水を含むと速やかに崩壊する錠剤)などが開発され、同社は黒字になった。すなわち、「顧客はドクター」と誰もが信じていた医薬品業界において、社長の号令と研修をきっかけにして、「本当のお客様は誰か」が再認識され、新しい会社が生まれたのであった。(p.120)

●トランスファーカーは、ニュージーランドのレンタカー会社である。通常レンタカーはC(消費者)を顧客としているが、同社はB(他のレンタカー会社)から収入を得る新しいビジネスモデルを考え出した。それが「無料レンタカー」である。消費者は、指定された日程、指定された出発地と目的地、車種とニーズが合えば、無料でレンタカーが利用できる。消費者にとっては夢のような話であるが、実はこのビジネスモデルは、レンタカー会社の"回送"を消費者に代行してもらっているのである。(p.126)

●IBMは「世界最大の情報技術サービス企業」というスローガンを掲げ、トップ自らがサービス事業への構造転換に向けて、リーダーシップを発揮した。創業以来無償で行っていたサービスを有償化したのは、1990年になってからだったが、1995年にはサービス分野で127億ドルの売上を上げ、以降サービス分野は急伸した。(p.128)

●顧客はコンピュータというハコが欲しいのではなく、コンピュータを利用することを欲しているのである。こうした考えから、社外のコンピュータ資源をネットワークを介して利用するクラウド・コンピューティング(以下クラウド)が標榜されてきた。(p.133)

●第二に、これまでコンピュータ・メーカーが貴重な資源として抱えてきたSE(システム・エンジニア)が、クラウド化によって、余剰になる可能性がある。たとえば富士通では、過去個別システムを作る際に強みとなってきた3万人のSEが、クラウド化により余剰になると考え、クラウド関連の新事業開拓や顧客目線による改善案の提示やシステム設計を手掛ける職務への転換を始めている。第三に、クラウド化によってユーザーはオフバランス化が図れるが、コンピュータ・メーカーにとっては、資産をより抱えるようになる。コンピュータを取り巻くグローバルな競争環境が厳しい中、固定資産を抱えるリスクは経営を圧迫する可能性もある。第四に、グローバルな価格競争に日本企業が生き残っていけるかという課題が残る。クラウドは究極的にはコスト勝負となり、かつてのDRAMと同じような競争になることが予想される。アマゾンなどは、ネバダ州の砂漠の中にサーバーを置き、壊れたら直さずに取り替えるという方法でコストを下げているが、今後は中国勢なども価格勝負でこの分野に入ってくると予想される。(p.136)

●図表3-5 サービス業のマイナスの差別化の例
・スターバックス(喫煙)
・サウスウエスト航空(座席指定、機内サービス)
・QBハウス(洗髪、髭剃り、現金授受、両替)
・カーブス(シャワー、プール)
・セブン銀行(法人融資)
・スーパーホテル(室内電話、チェックアウト)
・イケア(組み立てサービス)
・ライフネット生命(保険の特約)
・ケアプロ:ワンコイン健診(不要な検査)(p.138)

●日本では、理容師は理容所でしか働けず、美容師は美容所でしか働けないという法規制があるが、QBハウスは順調に出店を続けてきた。また幅広い顧客層に対応するため、女性を中心とした「キャトルボーテ」や、若い男女をターゲットとした「ファス」という店舗も展開している。2012年5月現在、QBハウスの店舗数は503店となり、うち海外には68店出店している。(p.140)

●しかし成功報酬型ビジネスモデルの場合、「成功の測定の仕方」が非常に難しい場合もある。かつてあるコンサルティング会社が、コンサルティング・フィーを無償にして、コンサルを受けた後の業績の向上分に応じて成功報酬を受け取るというビジネスを始めた。しかし実際は、成功の測定が難しかった。業績の増分が、そのコンサルのお陰なのか、たまたま業界にフォローの風が吹いただけなのか、また業績の向上をどの時点から測れば、コンサル効果を測定できるのか、などが議論となり、結局成功報酬制度は根付かなかった。(p.158)

●一般に、顧客にとって非日常的なことを日常的に行っているビジネスは、高い収益率を享受している(図表3-7参照)。
図表3-7 顧客の非日常を日常的に行うビジネス例
・冠婚葬祭業
・不動産業
・弁護士ビジネス
・経営コンサルティング
・遺言・相続ビジネス
・医療ビジネス(p.163)

●セブン銀行は、バリューチェーンの視点から言えば、通常の銀行のバリューチェーンをアンバンドリングし、その中でATMに資源を集中投下してきた企業と言える。~(中略)~同社の収益源は、セブン-イレブン等に置かれたATMで、他行のキャッシュカードで現金を引き出す時に発生する手数料から成り立っている。~(中略)~したがって同銀行にとって、上得意客は誰かと言えば、セブン銀行の口座を持っている顧客ではなく、他行の預金者でセブン銀行のATMを使ってくれる顧客ということになる。言い換えれば、「自行の客が少なく他行の客が多ければ多い程、収入が増える」という不思議な銀行である。なおセブン銀行のATM戦略の裏側では、コストのかかるATM店舗から撤退したいという地方銀行等のニーズと、ウィン・ウィンの関係にあったことも忘れてはならない。(p.166)

●その中にあってIMSは、医薬品の市場データを調査、提供する会社であるが、規制緩和のはるか前から事業を行ってきた。現在世界中のほとんどの医薬品会社が、IMSから毎年高額なデータを購入しており、同社は高い利益率を誇っている。IMS(正式名はIMSヘルス)は、1954年にドイツで創業し、現在世界100カ国以上で事業を展開している。医薬品データとコンサルテーションを提供する企業である。(p.169)

●ヒトに関しては、サービス業では末端の一人の行動で顧客満足が大きく左右される。この例として、再建途上のスカンジナビア航空での経験が、『真実の瞬間』という本の中で紹介されている(このタイトルの意味は、サービス業において顧客が満足するか不満になるかは、従業員が顧客と接する15秒間で決まってしまうということである)。こうした考えはサービス業では一般的である。第2節で述べた青梅慶友病院では、サービス業は、たった一人の愚行で、その企業の評価がゼロになってしまうことがあり、これを「100-1=0」と表現している。(p.171)

●もう一つ見えない効率化のために進めているのが、「アマゾン・マーケットプレイス」(中古市場)である。紙の書籍やCDなど、種類が多く、すべての在庫を抱えるとアマゾンの効率が落ちてしまう分野、いわゆるロングテール部分については、アマゾンは、「マーケットプレイス」を上手く利用している。すなわちマーケットプレイスでは、アマゾンにコストが発生するのは顧客からの発注時だけであり、在庫、物流は外部の業者、個人が担ってくれているのである。アニタ・エルバースは、「ロングテールの嘘」という論文の中で、音楽サイトやビデオレンタルなどの売上パターンについて調査し、証拠を挙げてロングテール論に反論した。彼女によれば、ビジネス的にはマイナー商品の需要に焦点をあてるのは得策ではなく、ロングテールから利益を上げることは難しいと述べている。仮に販売しているすべての書籍やCDをアマゾン自身が持てば、在庫費用が発生し物流費がかかり、ロングテール部分は利益を減らす可能性が高い。アマゾンは自分では持たずに、しかし製品ラインは維持するために、マーケットプレイスを上手く利用していると言える。(p.186)

●髭剃りのジレットが始めたことから、こう呼ばれるようになったが、髭剃りの柄の部分は安価もしくは無料で提供し、相対的に高く価格設定された替刃で利益を上げるビジネスモデルである。これは"Tying Strategy"とも呼ばれている。(p.199)

●江崎グリコが1997年から展開している「オフィスグリコ」は、職場に菓子専用のボックスを無償で置き、販売員が定期的に訪問して商品補充と代金回収を行うシステムである。価格は100円均一で、購入者がボックス上部にあるカエルの貯金箱にコインを入れる。一般の店頭価格が100円を超える商品も入っているが、顧客への利便性、訴求力を考え、100円均一とした。逆に定価販売でも、値崩れの心配はない。このシステムは、富山の置き薬と、ヤクルトの職域販売のビジネスモデルの合体とも言える。(p.202)

●職場における男性の消費は、菓子メーカーにとって"空白地帯"であったのである。あえて自販機にしなかった理由は、自販機のコストの問題と商品入れ替えの柔軟性に欠けることにあった。オフィスグリコでは、菓子を届ける担当者が、客の好みに合わせて、柔軟に商品を入れ替えられる。~(中略)~オフィスグリコは、貯金箱方式を採ることによって、代金回収の確実性は捨てた。しかし代金の回収率は95%であり、これは客先との信頼関係のバロメーターでもある。このような過程を経て、オフィスグリコのボックス設置数は2011年には11万台を超え、売上も40億円を上回った。こうして、白地需要を開拓したオフィスグリコは、カニバリゼーションというよりも需要拡大に貢献した。何よりも定価で売れる仕組みは、利益率面で貢献した。ちなみに「置き菓子」という言葉は、江崎グリコの登録商標であり、グリコの成功を見て、その後ロッテ、森永乳業、千趣会なども参入してきた。(p.203)

●スカイプは、2003年にスカイプ社が開拓した無料電話サービスである。2011年には、マイクロソフトがスカイプ社を買収し、現在はマイクロソフトの一部門になっている。(p.209)

●たとえば医療機器メーカーが、検査を代行するようなことが考えられる。第2章で述べたGEヘルスケアは、以前はMRIやCTスキャナーの製造・販売を行うメーカーであったが、最近は製品導入後の医療機関へのサービス・ビジネスに重点を移している。GEヘルスケアが、MRI検査を受けた患者のデータ分析を行っているのはその一例である。(p.219)

●マイケル・ポーターは、「戦略においては、何をやろうという選択と同じくらい、何をしないかという選択が重要である」と語ったが、旧来モデルに固執する慣性を打破する痩せ我慢が、新しいビジネスモデルを確立するためには欠かせないと言えよう。(p.225)

●第一の示唆は、多くのメーカーがビジネスモデルを変えるためにサービス事業に進出しているが、うまくいっているケースを見ると、サービス事業の売上増を狙うよりも、サービスに事業を広げることによって、ハードウェアの利益率向上に貢献していることである。たとえばコマツは、建機を販売した後、交換部品やメンテナンスで利益を上げている。KOMTRAXを使って予防保全ができるようになり、純正の交換部品が適正価格で売れ、これが利益率を向上させている。故障した後であれば激しい価格競争に巻き込まれてしまう世界で、"壊れる前日"に顧客を訪問することで、値崩れしない仕組みを作り上げた。これがコマツのビジネスモデルの鍵である。(p.239)
スポンサーサイト

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック