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エイドリアン・J・スライウォツキー、デイビッド・J・モリソン著「デジタル・ビジネスデザイン戦略」
Title:HOW DIGITAL Is Your BUSINESS?
Authors:Adrian J.Slywotzky, David J.Morrison

副題は、『最強の「バリュー・プロポジション」実現のために』。ちなみにこの本は、2001年に出版されたものです。昨年の11月くらいから読み始めて、読み終えるのも、ブログにアップするのも、だいぶ時間がかかってしまいました。


●我々は、デジタル技術を用いることで戦略上の選択肢を変えた企業、そして大幅に拡大させた企業をデジタル・ビジネスと定義している。この定義からすれば、巨大なウェブサイト、ネットワーク化された従業員、工場の操業を助ける優れたソフトウエアを有する企業というだけでは不十分である。デジタル・ビジネスは、デジタル技術を用いて、顧客や自社の社員にまったく新しい「バリュー・プロポジション(他社とは異なる価値の提供)」を考案し、新たに利益を生み出したり獲得したりする方法を発明し、最終的には戦略的差別化の真の目標である「ユニークネス(卓越した差別化)」を追及する。(p.i)

●1998年、デル・コンピュータの「オンライン・コンフィギュレータ(デジタル・ビジネスの強力な新ツールである『チョイスボード(顧客主導による選択システム)』の一つ)」が現れた。(p.ii)

●さらに2000年初め、世界最大級の「伝統的巨大企業」であるGEが、ビジネス・モデルを非デジタルからデジタルへと大規模に移行させるべく、積極的に活動していることが明らかになった。(p.ii)

●本書はビジネスを行うすべての人々に、未来のDBDへの道を示す企業の成功(あるいは苦闘や挫折)の物語が持つ経済的・組織的な影響を紹介している。こうした企業はデジタル化の先駆者であり、本書ではいくつかの章で彼らの物語を伝えている。すなわち、デル・コンピュータ(第4章)、セメックス(第5章)、チャールズ・シュワブ(第7章)、そしてシスコシステムズ(第9章)である。各章では、DBDが可能にする驚くべき成果、デジタル化に伴う企業の文化や価値の質的な変化を明らかにしている。(p.iii)

●また、GE、IBMといった伝統的大企業のDBDの根幹において、「社員に対するユニークなバリュー・プロポジション」や「社内マーケティング」といった組織戦略が重要視されている点にも注目されたい。ともするとERPやナレッジ・マネジメントといった手法による社内改革・効率化を求めがちだが、競合企業とのポジショニングや顧客への価値提供といった観点から社内戦略を策定する重要性が明確に示されている。単純なストック・オプションや若々しい企業文化だけがデジタル時代に求められているのではなく、こうした当たり前だが忘れがちな足元の重要性に気づいているのが伝統的巨大企業だというのが興味深い。さらに、課題発見のプロセスで用いる手法として、顧客ミーティング、社内ヒアリングといった定性的手法が勧められていることも留意点の一つであろう。(p.vii)

●DBDは、テクノロジーそのものを指すのではない。顧客の要求を満たしたり、ユニークなバリュー・プロポジションを生み出したり、人材を活用したり、生産性を抜本的に向上させたり、利益を拡大することを指す。デジタル化の選択肢を用いて、優位なだけでなく「ユニークな」ビジネス・モデルをつくり上げることをいうのである。(p.2)

●目的は必ずしも100%デジタル化することではなく、顧客に適切なソリューション(顧客が抱える問題の解決方法)を提供することである。理想的なやり方は時の経過とともに変化していく。あなたの会社の概要もそうあるべきなのだ。(p.10)

●デジタル・イノベーターの経験が示すように、DBDは事業のやり方を根本から変えてしまうことも可能だ。あなたが次のような劇的で積極的な移行を行えれば、DBDの恩恵を実現できる。
①事業の意思決定の根拠を「予測」から「認識」へ
②顧客に提供するバリュー・プロポジションを、(大小の)「不適合」から「最適」へ
③社内の情報の流れを、「ラグタイム(遅延)」から「リアルタイム(同時)」へ
④顧客サービスのモデルを、「供給者によるサービス」から「顧客のセルフサービス」へ
⑤従業員の時間の使い方を、「付加価値の低い仕事」から「能力の最大活用」へ
⑥さまざまなプロセスの重点を、「ミスの処理」から「ミスの予防」へ
⑦生産性の成長パターンを、「10%増のノルマ」から「生産性10倍増」へ
⑧組織を、「独立したバラバラな活動の寄せ集め」から、情報、考え方、解決法を共有する「統合されたシステム」へ(p.11)

●デジタル・ビジネスデザイン(DBD)企業への移行は、テクノロジーではなく、あなたの会社の事業課題と、ビジネスデザインを適切なものにするという難題から手がけられるべきである。おそらくデル・コンピュータの社長マイケル・デルの次の言葉がそのことを最もよく伝えている。「悪いビジネスをオンライン化しても、悪いビジネスであることに変わりはない。オンライン化された悪いビジネスになるだけだ」(p.16)

●優れたビジネスデザインには、次のような特徴がある。
・顧客との強い関連性
・事業領域(提供される製品や行われる価値連鎖の活動)に関する、社内の一致した決定
・傑出した利益モデル
・将来のキャッシュ・フローにおいて投資家の信頼を高めるような、差別化と戦略的コントロールの強力な源泉
・ビジネスデザインを支え、人材を有効に活用する組織のシステム
さらに最近のデジタル技術の爆発的な増大から、優れたビジネスデザインの特徴として次の項目も加えられる。
・会社内外の情報を管理、配信する強力なデジタル・システム(p.19)

●アトムの管理とビットの管理の違いを最初に考案したのは、マサチューセッツ工科大学メディア・ラボのニコラス・ネグロポンテだ。彼の著書『Being Digital』(邦訳『ビーイング・デジタル』アスキー刊)は、多数出版されている新たなテクノロジーに関する本のなかでも、わずかしかない真の必読書の一つである。DBDの価値を理解するうえで、アトムの管理とビットの管理の違いは大きな意味を持つ。アトムの管理とは、在庫の蓄積、製品の出荷、設備の購入、装置の設置、工場の建設といった、物理的な資産の操作を指す。ビットの管理とはデータの収集、分析、モデル化、分類、共有、複製といった、情報の操作をいう。(p.22)

●DBDとは、けっしてテクノロジーそのものを指すのではない。テクノロジーを用いてユニークでより優れたビジネスデザイン-顧客や従業員に提供できるものを向上させ、利益モデルや戦略的コントロールを強化するもの-を生み出すことをいう。こう考えてもらいたい。1にビジネス、2にデザイン、デジタルは3番目なのだ。(p.28)

●実のところ、大半のビジネス・システムには顧客が苛立つ要素が盛り込まれている。企業は、購買者のニーズを懸命に予測し、固定された製品ラインで製造する。購買者は差し出された選択肢に甘んじている。購買時点でいくつかの小さな変更(2~3のオプション機能や追加装備)はあるかもしれないが、ほとんどの場合、顧客がいろいろ要求しないかぎり、選択の組み合わせは固定されたままである。したがって顧客が自宅に持ち帰るものは、車であれ、衣服であれ、コンピュータであれ、望みどおりのものではないだろう。購買者の大半は、求めているものを手に入れることがあまりにも少なく、求めていないものを手にすることがあまりにも多い。(p.32)

●インターネットの登場で、いまや供給者と顧客の取引における従来の不幸なモデルに取って代わるものが可能となった。まもなくあらゆる市場で、顧客は自分たちが求めるものを正確に伝えられるようになり、供給者は求められる製品やサービスを不適合や遅延なく提供できるようになるだろう。この移行を引き起こしているイノベーションとは「チョイスボード」として知られる、強力な新しいタイプのビット・エンジンである。デルのオンライン・コンフィギュレータは、顧客が自分のコンピュータをニーズにぴたりと合うようデザインし、価格見積もりもリアルタイムに入手できるといったもので、初期のチョイスボードの最も成功した一例である。チョイスボードとは、個々の顧客が、特性、構成要素、価格、受け渡し方法などをメニューから選び、自分の購入する製品やサービスをデザインできる双方向型オンライン・システムである。顧客の選択は供給者の製造システムに送られ、部品調達、組み立て、出荷といった活動が開始される。(p.34)

●・マテル社の「マイ・デザイン・バービー」は、愛好者がバービー人形の友達を特別注文できるシステム。髪の毛のスタイルや色、肌や目の色まで選べる。スクリーンに映し出された人形の画像で注文を受け、それから製造が行われる。~(中略)~
・シスコの「マーケットプレイス」は、法人顧客が自社のニーズどおりにネットワーク用機器を組み合わせられるオンライン・コンフィギュレータである。
・チャールズ・シュワブの「ミューチュアル・ファンド・スクリーナー」では、顧客は同社のファンドや他社が扱うファンドを選んで、自分の投資ポートフォリオを組むことができる(ミューチュアル・ファンド・スクリーナーは、シュワブが顧客に提供している、より広範なシステムの一部にすぎない。通常は「アセット・アロケーション・プランナー」「パフォーマンス・モニター」といった、他ツールと組み合わせて用いられる)。(p.35)

●顧客が自分の求めるものを知っている場合には、チョイスボードは実に有効である。では、顧客がそれを知らないとしたらどうだろう。チョイスボード・モデルは、こうした問題に取り組もうと進化しつつある。~(中略)~アキュミンもビタミン剤の顧客に対して同様のことを行っている。顧客が自分にはどんなサプリメントが必要かわからない場合、アキュミンはライフスタイルや健康に関する質問を2分間ほど行って最適な用法を明らかにする。そして顧客の具体的な状況に合った組み合わせを提案するのである。これらは、チョイスボードの意思決定モデルの進化における第一歩にすぎない。(p.37)

●成功企業をあとから考察すると、CEOの頭のなかから優れたビジネス・モデルが完全な状態で現れたと想像しがちだ。しかし、そんなことはありえず、デルの場合も例外ではない。同社の歴史には、会社を潰しかねない大きな過ちもいくつかあった。だが、デルはそれぞれの過ちを、自社の中核的なビジネス・モデルについて学び、手を加え、再び全力を傾ける機会とし、過ちを犯すたびに強くなっていったのである。(p.53)

●93年、デルのすべての新型ノートパソコンの発売が予定より遅れることになった。その原因の大半は「フィーチャー・クリープ(顧客ニーズに応じるためではなく、単にその機能が実現可能で魅力的だからという理由で製品を過剰設計すること)」にあった。そこでデルは、アップル社でパワーブックの開発を指揮したジョン・メディカをスカウトした。すぐに彼は、開発中のノートパソコンで競争力がありそうなのは一つしかないと判断した。コストがかかりつらくもあったが、デルは正しい決断を下した。競争力のない製品の開発をすべて中止し、部門全体を「ラティチュードXP」として知られる唯一残った製品の早期完成に集中させたのだ。(p.54)

●自社の在庫管理について、マイケル・デルは次のように語っている。「我々は在庫の回転速度に対して懸命に取り組んできました。最高の回転率を達成するには、最小限の部品で市場の最大部分を対象にできるよう製品を設計しなければなりません。たとえば、4種類のディスク・ドライブで市場の98%をまかなえれば、9種類も用意する必要はないわけです」デルの言葉の裏に注目したい。ディスク・ドライブを9種類から4種類に減らせるのは、顧客が好む4種類のディスク・ドライブがどれかをはっきりと把握し、その結果、その嗜好がいつ、どんな方向へ移っていくか予測できるからだ。多くのメーカーや小売業者は、こうした問題について漠然とした情報しか持っていない。デルは顧客との結びつきをデジタル化することで、予測を認識に、ラグタイムをリアルタイムに置き換えたのだ。(p.65)

●社員に対するユニークなバリュー・プロポジションには、次のようなものがある。
・データを瞬時に入手できるデジタル化されたインフラストラクチャ
・実際のニーズに応じた、ジャストインタイムで必要十分な教育
・会社が常に事業をセグメント化し、細分化していることによる速やかな社内昇進の機会
デルのコンフィギュレータ・システムはパソコンの購買プロセスを非コモディティ化しただけでなく、顧客の「アップ・セル(1つ上のランクの製品を買うこと)」の機会を増やした。(p.70)

●彼はまず、セメックスが手に入れてきたセメント以外のさまざまな事業の大半を時機をとらえて売却した。そして87年には「サイバー・ビジョナリー」として強い支持を受けているヘラシオ・イニゲスを招き、CIO(最高情報責任者)に着任させた。情報の戦略的な可能性を十分に理解しているCEOのザンブラノと、ビジネスについて深い知識を持つCIOのイニゲスの間には強力なパートナーシップが築かれることになった。(p.83)

●我々が「戦略的怠惰」と呼ぶ人間の自然な傾向がある。過去に克服できなかった大きな問題には取り組みたくないという傾向だ。とくに、正面から攻撃するより回避したほうが有効かもしれない状況では、その傾向は強まりがちだ。そこで、白紙状態で事業課題に取り組んだり自分の創造力のみに頼るのではなく、誰が同様の課題に直面し、解決したのかを尋ねてみてほしい。研究したり、学習したり、採用したりする価値のある慣行や方法はないだろうか。事業課題の解決策を探す際には、競合企業を調べるだけでは不十分だ。競争のレーダー画面には映らないが「最良のビジネス・モデル」のレーダー画面には映っている別の業界や市場の企業から、最も有益な回答が得られるかもしれない。自分が新しいアイディアに異議を唱えるような反応を示していると気づいたときは、それをやめるべきだ。よく知っている領域からしか学ぼうとしないのは、自分の組織を救いようのない神経症、すなわち、違った結果を望みつつ同じ行動を繰り返すという落とし穴へ追い込むようなものである。自分の業界の特性に縛られずに、一歩退いて、直面している最大の事業課題を一般化してみるとよい。どこかほかの会社が同様の課題に直面したことはないだろうか。彼らはどのように取り組んだだろうか。ビジネス界のどこかに解決の糸口が見当たらないだろうか。(p.84)

●セメックスの経営幹部たちは、常にラップトップ・コンピュータを持ち歩いている。彼らが手にする事業に関するデータは、すべて24時間前のものである(競合企業は1カ月前のものしか入手できない)。(p.90)

●セメックスの世界的な拡大の方式は次のようなものだった。ある地域市場で勝利し、その後、そこで生み出された利益と効率を用いて隣接する市場へ進む。そこで成功し、またそれを繰り返すのだ。(p.93)

●実践的でハイタッチ(人間的触れ合いの多い)なサービスを必要に応じて使えるようにすることは大切だ。だが、人が直接サポートする必要がないサービスをデジタル化すれば、コスト構造が改善されるうえ、顧客はよりよいサービスを受けられ収益性も増大する。(p.108)

●二つあるいは三つの領域が同じくらい重要な場合には、自社がそれらをどの程度並行してできるか考えてみよう。一度に二つ以上の領域で大きな変化に取り組むことにはリスクが伴いがちだ。企業文化の問題、自社のシステムの柔軟性、社員のデジタル・レディネスも問題となるだろう。大半の企業では一つの領域に絞ってそれに打ち込んだほうが確実だ。(p.114)

●個人向け金融サービスほど顧客のニーズや要求がめまぐるしく変わる業界は少ない。人口統計、経済、法規制、競争の変化によって、顧客は絶えず動く標的となっている。(p.120)

●リインベンションに慣れていない、伝統に執着する企業であれば、適切な決断を実施に移す行動が数カ月、あるいは数四半期遅れていたかもしれない。だがシュワブは歯を食いしばって行動を進めた。再統合の動きが発表され、オンラインでもオフラインでも1000株まではすべての株式取引を29.95ドルで行うという新たな手数料体系も示された。手数料収入における大打撃に反応してシュワブの株価は急落した。1998年の夏の終わりには、時価総額は111億ドルから87億ドルと、20億ドル以上も下がった。だが、シュワブの経営陣はうろたえなかった。シュワブは市場シェアを増やし、投資家もそれに気づいた。株価は安定し、次に浮かび上がり、やがて急上昇した。クリスマスには、シュワブの市場価値は夏の底値の2倍以上である230億ドルまで拡大した。あとになってみれば、シュワブのDBDへの移行段階-イー・トレードに対抗するためにe-シュワブを設立し、きわめて競争的な独立事業として育ててから、手数料で会社全体に影響を与えるにもかかわらず再統合する-は、確信に満ちたものに思えるかもしれない。だが、そのときは、まったく手探りの状態だったのだ。(p.126)

●デジタルな存在(クリック)が速度と利便性を提供する一方で、物理的な存在(ブリック)は信頼を構築するための基盤を提供している。多くの事業において、顧客はその両方を求める。(p.129)

●「シュワブは、私の持ち株や関心のある株の情報を、何年にもわたって毎日毎週提供してくれており、さらに月に一度は投資月報を送ってくれます。一方、ファミリーのサービスは毎日同じようなニュースを送ってくるだけ。最近ようやく改善してシュワブ並みになりましたが、それでも投資を選ぼうとする際には、自社のファンドを押しつけようとします。シュワブの助言のほうが、はるかに中立的ですね。毎年シュワブはクイッケン(インテュイット社の会計ソフト)のアップグレード版を送ってくれます。つまり、彼らは私が財務管理にそれを使っていることを知っているのです。これはシュワブの無料サービスの一つです。ファミリーにはその手のサービスは一切ありません」(p.133)

●成功を収めているハイブリッド・モデルは、どれも特定の顧客層にとって最も都合よくビットの管理とアトムの管理を統合するように設計されたユニークなビジネス・モデルとなっている。もちろん、適切なビジネスデザインの決定は、顧客ニーズへの深い理解から生まれる。ハイブリッド・モデルへの移行には、必ず何らかの痛み(財務、組織、あるいはその両方での)が伴うし、同じアプローチがあらゆる事業、あらゆる顧客集団に同じように機能するわけではない。だが、ハイブリッド・モデルにおいて重要なのは、顧客に選択肢を与え、コストと顧客ニーズを最大限に適合させ、より高い顧客満足を引き出し、より利益を生むビジネスデザインを可能にするような特徴的な属性(オンライン、ライブパーソン・オンライン、郵便、電話、販売員、物理的な拠点)の組み合わせを用いることである。(p.152)

●だが、ハイブリッドの物語とは、伝統的巨大企業の優位性の物語である(ほとんど活かされていないが)。伝統的巨大企業は製品、顧客層、物理的な設備や店舗、歴史、ブランドを有している。それら全部をすぐにコピーするのは不可能あるいは困難だ。一部の伝統的巨大企業に欠けているのは、優れたインターネット企業が持つ、迅速性、柔軟性、顧客中心の文化、成長の可能性などといった特徴である。こうした特徴を模倣するには、資本の投資より考え方の転換が必要になる。強力な社内マーケティング力、入念なデザイン力、新たなベンチャー的組織こそが考え方の転換を生み出す。(p.153)

●優れたテクノロジーを基礎とする企業は、それに並々ならぬ思い入れを抱いてしまい、世の中が変化してもしがみつきがちだ。自分の会社や製品の提供物を、誇らしげな親の目ではなく、顧客の目で判断しなければならない。(p.163)

●シスコにとって、買収は収入や市場シェアを拡大するための手段ではない。顧客ニーズにより有効に応えるために、製品開発のサイクルを速めるための手段なのだ。(p.163)

●シスコの製品は世界各地の34の工場で製造されている。自社工場は2つだけだが、インターネットの活用で、シスコはあらゆる業務の品質管理と生産計画をサプライヤー、顧客、従業員にすべて見せることができる。こうしたコミュニティは、実際に機能している最強のバリュー・ネット(高度にデジタル化されたサプライ・チェーン)の一つだ(バリュー・ネットの詳細は、http://www.valuenets.comを参照)。(p.177)

●製品生産の70%を外部委託することで、シスコは新たな工場を建設せずに生産量を4倍にした。製造後は顧客に直接出荷され、シスコの手に触れることのない外注製品が、総収入の約40%を占めている。新製品の設計プロセスも効率化されている。以前は4つか5つの試作品をそれぞれ完成させるのに1週間程度かかり、そのほとんどの時間は技術者間で情報やデータを収集、配布、比較するのに費やされていた。シスコは新製品情報データベースをつくり、この全プロセスを30分にまで短縮し、技術者が費やす時間の半分と年間約1億ドルのコストを削減した。(p.177)

●チャールズ・シュワブは、能動的な顧客にさらなるパワーを与えるために、実に多くの素晴らしいシステムを構築している。資産配分からポートフォリオの現実監視まで、投資プロセスのあらゆる段階に対応する以下のようなオンライン・ツールを提供しているのだ。
・オンラインのモデリング・プログラムによって、顧客の具体的な投資プロフィール(年齢、目標、資産基準、リスク許容度など)に応じてつくり出される「アセット・アロケーション・プラン」
・現行のあらゆる投資計画についての情報を蓄積・更新し、希望する退職時の目標に到達する方法について具体的な助言を行う「リタイアメント・プランナー」
・S&P社による企業や業界の調査報告、ファーストコール社による収益予測、ビッカーズ社による自社株売買のデータ、ビッグチャート社の価格および出来高のデータ、ブリーフィング・ドット・コムによる経営幹部や業界専門家のインタビュー、ダウジョーンズのニュース記事など、多くの株式仲買人が入手している情報に匹敵する投資データの源泉「アナリスト・センター」
・初回公募に関する「インサイダー・アクセス」と、ウェブ上で配信されるCEO、証券アナリスト、ミューチュアル・ファンド・マネジャーのインタビュー。~(中略)~
・7000を超えるファンドの過去の実績、リスク・プロフィール、モーニングスター社の評価、経費率を提供する「ミューチュアル・ファンド・レポートカード」
・S&P500種平均株価、ダウ・ジョーンズ工業平均株価、ラッセル2000、ナスダック指数といった適切な基準との比較で、個人の投資実績を継続的に測定する「ポジション・モニター」(p.188)

●巧妙につくられたデジタル・システムによって顧客自身に完璧な仕事をさせ、企業と顧客の双方がコストも抑えられるとしたら、なぜ企業は高いコストを払ってひどい仕事を続ける必要があるだろうか。ここで、ビジネスデザインを評価するための重要な基準が新たに加わる。すなわち「自社のビジネスデザインは、顧客が自分で行うのが最適である作業をどの程度まで行えるようにしているか」ということである。自社のビジネスデザインについて考えてみてほしい。次の活動のうち、顧客が自分で行えるものはいくつあるだろう。
□一般的な情報を見つける          □詳細な製品情報を見つける
□注文を設定する              □注文を行う
□注文の状況を確認する           □技術面での疑問を解く
□別の顧客と連絡を取り、技術面の疑問を解く □比較を行う
□修理の予定を自分で立てる         □サービス契約を設定する
□コンテンツをつくる            □製品の設定を試す
□ソフトウエアをダウンロードする      □他の人々が掲示した批評を読む
□批評や解説を掲示して人々に読んでもらう  □自分の事業に関連したその他の活動を行う(p.190)

●顧客に大半の問題を自分で解決させることができれば、人材は本当に複雑な質問だけに時間やエネルギーを注ぎ込める。その結果、満足する顧客が増え、人材も決まりきった問題を何千回も解くのではなく、高度な技能を用いる機会に恵まれることになる。(p.192)

●だが、GEは逆の方向にも境界を越えている。顧客の活動連鎖に入って、顧客自身が行うものとされている仕事をはるかに効率的に行えるツールを提供しているのだ。GEの勢いは顧客のシステムへと向かっている。GEは、「顧客が従来の仕事をはるかに生産的に行えるようにする情報や分析ツールをいかに提供できるか」といった単純な質問に全力を尽くそうとしている。(p.193)

●「洞察」は、企業にとって最重要課題を見抜き、可能なことを明らかにし、適切な攻撃の順序を決定する。あなたの業界で価値が移動している場所はどこだろうか。顧客の優先事項はどう変化しているだろうか。デジタルへの移行をうまく成し遂げるには、企業はこうした基本的なビジネスの疑問に対する正確な洞察を生み出すために大変な苦労をしなければならない。(p.195)

●同じく重要なのが「勇気」だ。本書に描かれている企業について考えてもらいたい。彼らは、手数料の圧縮による収入減をものともせずに行動し(シュワブ)、ウォール街が高額すぎると考えるような買収を敢行し(シスコ)、顧客にとってあまりにも急激な動きではないかという不安に耐える(セメックス)という勇気、そして、あとの章で見るように、凝り固まった従業員たちという社内マーケティングの大きな難題に取り組む勇気(IBMとGE)を持っていた。デジタル化の障害にはさまざまなものがあるが、どれもみな結局は洞察の不足、あるいは勇気の欠如ということに要約される。(p.196)

●デジタル・レディネスの度合いは、市場によってずいぶん異なる。だが、変化の速度はほとんどの人々が考える以上に速い。顧客のデジタル・レディネスは、1年ではなくひと月ごとに変化している。(p.197)

●デジタル・イノベーターの経験から明らかになった現実として、従来型の企業がデジタル企業に変わるには最低でも4年かかるという事実がある。なぜそれほど時間がかかるのか。いくつかの理由がある。第一に、賢明なデジタル化の計画を創案するには時間が必要ということがある。主要な事業課題に的を絞り、デジタル化によって顧客が最も恩恵を受けられるような方法を見つけ出し、事業プロセスにおけるアトムとビットの最適な混合比を把握し、どんなビット・エンジンが必要になるかを判断しなければならない。大半の企業ではこれらの問題を終えるだけでも6カ月から1年はかかるだろう。第二に、デジタル化の効果は全面的なものであり、求められる変化も広範なため、社内のあらゆる事業部、部門、個人が関わらねばならないということがある。それには並外れた社内マーケティングが求められる。また、デジタル化に関する複雑な考えが、組織全体に浸透するのにも時間がかかる。(p.199)

●ウェルチの新しい考え方によれば、ウェブは事業を完全に変えてしまう。「それによって顧客との関係が変わる……事務処理で隠せるものはなくなる……実行がきわめて重要になる。犯したミスはウェブ上ではすべて筒抜けになる。従業員との関係が変わる。もう誰かが知識を隠し持ったまま話し合うこともなくなる。情報の支配によってではなく、アイディアによって導いていかねばならなくなる。サプライヤーとの関係が変わる。18カ月以内に我々のすべてのサプライヤーはインターネットを介して供給を行うか、取引をやめるかのどちらかになる」ウェルチの態度が劇的に、素早く変化したことは明白だ。彼がデジタル化への直観を得たのは98年の休暇シーズンだったという。そのとき彼の家族はクリスマスの買い物に没頭していたが、ウェルチは家族が一歩も家の外に出ていないことに気づいた。買い物はすべてオンラインで行われていたのだ。突然、インターネットの実際的な力と、それがGEの事業で果たしうる役割が明らかになった。(p.203)

●利益が川下つまり製品の製造・販売から、製品を基礎としたソリューションやサービスの提供へと移りつつあるため、生産性におけるトップの座だけでは不十分だと気づいたウェルチは、またその点を教え導くことになった。(p.205)

●98年の第4四半期、あるいは99年の第1四半期のどこかで、ジャック・ウェルチはビジネスの悪夢を見て目を覚まし、次のように考えたに違いない。「18年間にわたって私は歴史上最も適応性があり、強固で、競争力のある大事業を築いてきた。だが、我々はどこにいるのか。どこにもいないではないか。インターネットはあらゆるレベルのあらゆる製品やサービスの価格を完全に透明化するだろう。利益は圧縮されることになる。今後2年間で販売価格が仕入価格より急激に低下すれば、我々の利益は激減してしまう。また、我々には自分たちが本当に利益を得ているのはサービスや融資からであることをすでに知っている。だが、それはビットのみの事業であり、デジタルの世界では参入障壁が低い。デジタルな企業がそうした事業を横取りするようになれば、我々の儲けはなくなってしまうだろう。しかも、インターネット上には新たな中間業者-eマーケットプレイス、オークション企業など-が急増している。もし彼らが成功すれば、我々は顧客との重要な関係を管理できなくなる。さらに、いまやレーダー画面の端には数十もの新規参入企業が現れ、我々の各事業を狙っている。のんびりしていたら、相手を阻止する前に我が社は破壊されてしまう。ではいま何をするべきか」(p.206)

●1999年5月初め、ウェルチはアナリストたちに、GEを新世紀に導くことになるデジタル戦略を明らかにした。彼はそれを「デストロイ・ユア・ビジネス・ドット・コム(DYB)」と呼んだ。~(中略)~「DYB」はたちまち「ナンバー1もしくはナンバー2になる」「ワークアウト」「サービス」に代わるGEの用語として、GE全社、さらにはビジネス界全体に知られるようになった。それはウェルチが初めてトップ・マネジャーたちに送った電子メールの件名にもなった。そのなかで、ウェルチは各部門のトップに、25歳未満の人材を採用し、インターネットを使ってGEの既存事業を破壊する方法を考え出すことだけに当たらせるよう求めた。手書きメモで知られていたウェルチが、伝達手段として電子メールを採用したことは、説得力あるメッセージとなった。(p.208)

●6カ月後の99年11月には、DYBチームはGEが直面する主要な脅威の大半を明らかにし、それらに対して有効と思われる対応の作成に取りかかった。ここでDYBは「グロウ・ユア・ビジネス・ドット・コム(GYB)」へと進化した。GEはもはや守勢ではなかった。デジタル空間における成長の方法を前もって探るようになっていた。GYBチームはGEの中核的な価値を除くすべてのルールを破る権限を与えられ、インターネットでの電子商取引の拡大、サービスや販売を向上させるための特定顧客向けエクストラネットの設置、社内プロセスを合理化するイントラネットの開発によって、GEのデジタル化を推進するよう命じられた。現在こうした構想の多くは、すでに大きな恩恵を生み出している。(p.209)

GEメディカルシステムの学習ソリューション
現在、このインターネット情報サイトの複合体では、GEの顧客に画像診断(X線、磁気共鳴断層撮影法、コンピュータ断層撮影法)からあらゆる臨床治療の話題(心臓病、内科、小児科など)にいたるまで、健康管理やテクノロジーのテーマに関する、750時間以上のオンライン・トレーニングを提供している。トレーニングについて助言を得たければ、オンラインのガイダンス・カウンセラーが利用できる。また、インターネットでの学習を補えるよう、GE TiP-TV放送ネットワーク(GEメディカルシステムによる契約制の衛星放送)でも番組が提供されていて、世間で話題になっている健康問題に関するセミナーやインタビューも放送されている。(p.213)

●GEの顧客であるイギリス南部の発電所の担当者が、遠隔診断と通常の業務とを比較している。「別のテクノロジー企業とのやりとりでは参りました。あるエンジンをアメリカにいる専門家に診てもらう必要があったのですが、データをダウンロードし、彼らに電子メールで送らねばならなかったのです。~(中略)~それに対し、GEの専門家はアメリカのオフィスにいながらにして、現場のコンピュータ画面を厳密に再現したものをウェブ上で即座に見られます。~(中略)~RM&Dのおかげで、専門家は各顧客のいる場所に、事実上すぐ駆けつけることができるのです」(p.214)

●最近ウェルチは『フォーチュン』誌のインタビューで、次のような懸念を示した。「我々は適切な遺伝子プールを持っているのだろうか?大企業に入る人々は殻を破りたいと考えるだろうか?GEのために働くことがウェルチの経営改革の歴史である。一見するとそれは無秩序に見えるかもしれないが、実は細心の注意と高度な知性に基づいて行われ、次のような社内マーケティングの最も重要な原則を適用している。
メッセージを簡単にする。
メッセージを700回繰り返す。
・多様なメディアを用いて伝える。
・継続的に戦略やビジネスデザインを伝える。(p.217)

●ジャック・ウェルチのGEでの20年に及ぶ在職期間は、「取引(製品の販売)」から「継続(サービスにおける複数年の関係)」、そして「ユニークさ」といった、顧客との関係の進化で特徴づけられる。最新のリインベンションにおいても、GEはインターネットを用いて優良顧客とのユニークな関係をつくり上げている。GEは他の供給者が太刀打ちできないような、製品、サービス、ソリューション、情報、分析ツール、活動支援のポートフォリオを提供しているのだ。(p.221)

●これらすべてを変えるために、ガースナーは第一線で行動せねばならなかった。官僚制に具体的な変化を強要しつつ、一方で企業文化の一新を促す象徴的・実質的な意思表示を行った。早い時期に彼は、理念(ビジョン)こそIBMに最も不要なものであるという、いまや有名になったスピーチを行った。必要なのは「フォーカス」と「実行」なのだ-彼はそう主張した。(p.232)

●ガースナーは企業としての思考やコミュニケーションのパターンの変化を推進している。彼はまず、自分に直接報告する関係にある上層部から始めた。着任後まもなく、ガースナーは20人の経営幹部に、以下のような質問に簡潔な文章で答える報告書を書かせた。「あなたの事業は何か」「あなたの顧客は誰か」「あなたの市場はどこか」「あなたの強みと弱点は何か」「あなたの主要な競争相手は誰か」。(p.232)

●ガースナーはIBMに「(市場における)勝利、(質を伴った)サービスの実行、(職能や部署を超えた)チーム」という新たなスローガンを導入した。さらに、研究者に対し、研究所にこもらず定期的に顧客と会うよう奨励するなど、具体的な方法でそれを実行した。(p.233)

●ガースナーは個人的にも開かれたコミュニケーションの手本を示した。数十のIBMの支社をめぐって「タウン・ミーティング」を開いたのだ。彼は、衛星放送を通じてメッセージを流したり、用意したプレゼンテーションを行ったりはせず、メモを見ずに話し、あらゆる質問にざっくばらんに答えた。(p.233)

●最初の数カ月間には、官僚的な時代が終わったことをはっきり示すために「公開処刑(とりわけ変化に反対するマネジャーを十分な理由で解雇すること)」が何度か行われた。(p.233)

●大半の大企業は、社内、とりわけ人事や情報技術といったスタッフ部門に関心を向ける傾向が強い。そのため、伝統的巨大企業がデジタル化を推進する際は、顧客ではなく社内への配慮を優先しがちである。だが、もしあなたの会社が北東象限への移動を計画している伝統的巨大企業だとしたら、DBDがいかに自社に役立つかを考えることから始めてはならない。まずは、それが自社の顧客にもたらしうる恩恵を探すべきである。(p.243)

質の悪いビジネスデザインをデジタル化してしまうと、役に立たないだけではすまない。真のニーズから時間とエネルギーと資金を奪い、進化したかのような錯覚さえ生み出してしまう。結局、将来正しい方向へ動こうとする際の妨げにしかならない。(p.244)

●テクノロジーの力そのものにはさほど意味がない。重要なのはテクノロジーと顧客ニーズとの適合の度合いである。(p.262)

●伝えられている話では、その社名はあるプログラマーがふざけて「きたるべきもう一つの神聖な非公式のお告げ(Yet Another Hierarchical Officious Oracle)」のイニシャルを並べたものだとされている。(p.262)

●AOL、ヤフー、イーベイの成功が示すように、次の条件さえ満たしていれば、インターネット企業は収益性を上げられるのである。
・明確に考え抜かれた顧客選択
・顧客を引きつけるユニークなバリュー・プロポジション
・理にかなった、持続可能な価値の獲得および利益モデル
・利益や顧客関係の戦略的コントロールを維持するための基礎
・新たな競争の課題、顧客の変化、技術革新、市場の変化に対応して素早く進化するための意欲、能力、勇気
多くのドット・コム企業にとっては、最後にあげた要素がとくに困難な課題だろう。大きな景気後退や株式市場下落を経験したことがなく(もちろん、それを乗り越えたこともない)、顧客やビジネスよりテクノロジーを優先しがちな若い経営者が率いることが多いドット・コム企業は、今後1~3年の間に最大の課題に直面することになるだろう。(p.275)

●共通する言葉の必要性など、わかりきったことに思えるかもしれない。だが、その達成は驚くほど困難な場合がある。シュワブのデビッド・ポトラックは、この問題を周到に分析した。彼は自著『Clicks and Mortar』(邦訳『クリック&モルタル』翔泳社刊)のなかで、技術系マネジャーと非技術系マネジャーが使用する語彙の違いを示している。技術者が逐語的でざらついた言い方によって意思を伝える傾向があるのに対し、非技術系のビジネスマンは隠喩的でおおまかになりがちであることに彼は気づいた。結果として、技術者たちは開発過程や解決法について完璧かつ難解に考えやすく、一般職の者たちは必要十分で簡潔なことを優先しやすい。こうした見解の相違は避けがたいものかもしれないが、二人のマネジャーが、自分たちが異なった言葉で話していることに気づいていないと誤解が生じてしまう。新しいビジネス・ソリューションの要求に対して、技術者が(そのアイディアの概略を意図されたものより逐語的にとって)「それはできない」と言い、一般職の者は(技術者は協力する気がないとか、なわばりを守ろうとしているのだと予測して)「でも、とにかく方法を見つけてくれ」と答える。最初にこうした摩擦があると、衝突や互いの反感は雪ダルマ式に膨れていくことが多い。最終的に計画が達成されたとしても、二倍の予算と三倍の時間を費やすことになりかねない。(p.279)

●社内マーケティングとは、社外のマーケティングと同様、人々の考え方、態度、行動を変えるプロセスだが、その対象は自らの組織の人材-社内顧客-である。社内および社外のマーケティングは、どちらも背後に次のような指針を持つ。
・顧客を知る。
・適切なメッセージを生み出す。
・そのメッセージを、顧客にとって意味を持つ、簡潔で説得力のあるかたちで表す。
そのメッセージを700回繰り返す。(p.282)

●優れた社内マーケターは片手で数えられるくらいしかいない。すなわち、ジャック・ウェルチ(GE)、スティーブ・バルマー(マイクロソフト)、ハーブ・ケレハー(サウスウエスト航空)、スコット・マクニーリー(サン・マイクロシステムズ)、それにマイケル・デル(デル・コンピュータ)である。彼らは業界、そしてビジネス全般の代弁者となったが、それは、つい没頭しがちな他の事業課題の圧力に屈することなく、自社の戦略の本質を-社内にも社外にも-伝えることが最重要業務であることに気づいたからである。偉大な社内マーケターがごくわずかしかいないのは、ビジネスを行う者は誰もが多忙なためだ。彼らの職務内容の記述に「社内マーケティング」が載ることなどまずないし、ましてそれがどういうものなのか明確にされることもない。非常に見過ごされやすい職務なのである。(p.283)

●時間とエネルギーを投資して戦略やビジネスデザインを繰り返し明確に伝え、組織の全構成員がCEOと同じ情報を持っているようにせねばならない。(p.287)

●偉大なマーケター-社外、社内、どちらのマーケティングでもよい-には、きわめて明確な一つのメッセージに重点を置くという顕著な特徴がある。メッセージは、簡潔だが記憶に残るフレーズに要約されることが多い。(p.289)

●賢明な社内マーケターは、それがどのようなものであれ、メッセージを繰り返し発し続けるということを始めている。重要なテーマを確実に伝えようとすれば、こうするしかないのだ。新しいアイディアを売り込むときに大切なのは数だけなのである。メッセージを何回伝える必要があるかを見積もり、それを10倍せよ。(p.290)

●我々は、メッセージを1回や2回ではなく700回伝えなさいと言うことがある。保証しよう。あなたがスピーチを行う、スローガンを用いる、あるいはアイディアを叩き込む、その700回目に、ようやく部屋のなかの誰かがそれを理解することになるだろう。最も重要なメッセージについては、繰り返しすぎるということはまずないのだ。重要なメッセージは数週間や数カ月ではなく、最低でも1~2年は伝え続けるべきである。(p.290)

●要約すると、社内マーケティングとは次のようなものである。
・伝達者はCEOだけではいけない-トップの200人のマネジャーも。
・メッセージを伝えるだけではいけない-耳を傾けたり、修正することも必要。
・複雑なメッセージではいけない-簡潔で、要を得た、記憶に残るものに。
・一度や二度伝えるだけではいけない-700回の伝達を。
・10や20ものメッセージではいけない-一度に一つだけを。
・数週間や数カ月だけ売り込むのではいけない-最低でも一年から二年かけて。(p.291)

●1976年にモンタナ州で創業したグレート・ハーベスト・ブレッド社は、アメリカ国内34州に130のパン工場を持ち、年間6000万ドルの売上を誇っている。99年までは、各工場のオーナーはほとんど独立して活動していた。会社とオーナーの交わりは、一般的なトレーニングとわずかな書類に限られていた。だがその年の春、グレート・ハーベストは、パンの製法や経営についての助言、店内装飾や販売促進やマーケティングに関するアイディアを扱う全社的なイントラネットをつくった。いまではグレート・ハーベストのオーナーの80%が電子メールで定期的に連絡を取り合い、優れたアイディアが生まれればすぐ全国に行き渡るようになった。(p.297)

●DBDが生み出すものは、生産性の増大、コストの削減、顧客サービスの向上だけにとどまらない。それによって多くの仕事がより価値の高いものへと再定義されることになる。
・セールス担当者は、注文取りから顧客の問題解決者へ移行
・マーケターは、データ追跡者から機会追及者へ移行
・財務管理者は、計算係から戦略分析者へ移行
・サービス担当者は、苦情処理係から価値創造者へ移行
・マネジャーは、問題解決者からコーチやメンターへ移行(p.298)

●シスコのオンライン顧客サービス・システムは、顧客の質問に対する回答を取り込み、他の人々が自由にそれを利用できるようにしている。そのため、一つの解決法が何度も再利用されることになる。デルのトレーニング・システムは、それとまったく同様のことを自社の社員に向けて行っている。一度つくられたビデオ・トレーニングのモジュールは、受講者が都合のよいときや、その知識を有効活用できそうなとき、何度でもすぐに再利用できる。(p.300)
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