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坂本桂一著「新規事業・成功の」
坂本さんの本、一気に3冊まとめ読みしたものの3冊目です。やっとテキスト入力が完了しました!


●この本自体は単独で役に立つように書かれていますが、新規事業に関わる方はぜひ前著『新規事業がうまくいかない理由』(東洋経済新報社)もお読みいただきたいと思います。なるだけ、前著と内容が重複することなく書くことにしましたので、失敗の原因や、どう成功させていくかなどかなりの部分は前著のほうに書かれています。本書はより実務寄りです。前著で「まったくその通りである」という意見をたくさんいただいたのと同時に、ぜひもっと実務寄りの本を書いていただけないだろうか、という声にお応えしたのが本書です。~(中略)~本書は精神論を省き、現実の新規事業立ち上げの実務に終始しました。(p.4)

●話を戻せば、新規事業公募制かどうかを問わず、新規事業を立ち上げようという会社がまず行うべきことは、「自社にふさわしい」とは何か、まずその目的・要件はきちんと議論し定義することです。そして、その定義はきちんと社内に開示していくことが必要です。(p.20)

●特に新規事業の場合、よいプランを持ってチャレンジしたとしても失敗する確率がどうしても高くならざるをえません。失敗の確率のほうが高く、また、成功したからと言って十分な報酬が得られるわけでもない。日本の会社においては失敗した場合はイコール自分のキャリアパスを傷つけることにつながってしまう。だからリスクばかりで、得るものは少ないのです。(p.21)

●私が事業開発部を設置している会社に行って最初に聞くのは、この事業開発部は、「新規事業を生み出す器」なのか「新規事業自体を立ち上げる」ことを期待されているのか、ということです。ちょっとややこしいですが、前者に期待されるのは、「(必ずしも自分が立ち上げるのではなく)社内から新規事業が生まれてくれるような仕組みを構築していくこと」であるし、後者においては「実際に自身が立ち上げメンバーとして新規事業を生み出していくこと」になります。この両者は機能としてまったく異なるはずですが、多くの会社でこうした役割やそれにともなう権限の議論がなされることはほとんどありません。(p.26)

●その際の社内の何となくの暗黙的な合意としては、「よいアイデアが出たらおそらく自分たち事業開発部が立ち上げ自体をやることになるだろうな」という程度です。このパターンは、ありがちな(そして大きな)間違いであると言えます。(p.27)

●そもそもの性質として成功確率の低い(一般の上場企業において5%程度と言われています。もちろん本書ではそれ以上を目指します)新規事業は、本来は成功事業を生み出すために、継続的に複数個を立ち上げていくことが必要になってきます。1個作ればよいというものではないのです。事業開発部メンバーが1個の立ち上げにかかり切りになってしまうと、成功か失敗かはさておき、1つは新規事業が立ち上がるかもしれません。しかし、次は続かなくなってしまうのです(なぜなら、メンバーは皆、「最初の1つ」の立ち上げに汲々(きゅうきゅう)としているからです)。その結果、事業開発部に本来蓄積されるはずだった、新規事業企画に関するノウハウやスキルが永遠にたまっていかないことになります。(p.28)

●つまり、新規事業を連続的に立ち上げていくためには、事業開発部はプランニング及びプロデュースに専念し、立ち上げフェイズ以降は事業開発部から基本的に切り出し、別のチームに任せることが重要であると言えるのです。(p.29)

●新規事業に取り組むにあたっては、そもそも自社がなぜ新規事業をやらなければならないかという目的の明確化が重要であるのと同じくらい、事業開発部に対しては「事業を作り出す器となる組織である」ということを言ってあげることが重要なのです。(p.30)

●しかし、新規事業を社内で継続的に、複数個作っていきたいのであれば(そもそもの成功確率が低いですから)、最初から事業開発部というのは新規事業を生み出すための装置、受け皿だと割り切って設計するべきだというのが結論なのです。(p.31)

●新規事業を検討する際には、ほとんどのケースで複数の事業の可能性を並行して模索しながら進めていくことになるでしょう。では、それぞれの可能性について、どの程度の深さで議論をしていくのが適当なのでしょうか。すべての可能性についてビジネスプランまで作成し議論していたのでは、非常に効率が悪いと言えます。しかし、単なるビジネスアイデアや要素技術レベルで議論していては、実際にそれがビジネスになるかどうかということを検討することすら困難です。(p.36)

●私が新規事業の複数の可能性を検討する時には、まず「ビジネスシード(種)」を選び出し、それをもとに「ビジネススキーム」を1枚、シートにまとめて議論していく形を勧めています。詳細なビジネスプランの前段階として、「ビジネスシード」を選び出そうという話をすると、よく「ビジネスアイデア」や「技術シード」などと混同する方がいるようです。また、「ビジネスシードとビジネスアイデアの違いは何でしょうか」という質問もよくもらいます。ビジネスシードとビジネスアイデアの違いとは何か。それは「ビジネスになりえるかどうか」という部分です。(p.37)

●話をシンプルに考えるためにシャンプーという商品の例を出しましたが、サービスビジネスなどを含めて定義するなら、「ビジネスシード」とは、「将来的に、継続した仕組みとして収益を生み出し続けることが想定できるビジネスの種」のことです。多くの集まったビジネスアイデアから、まず、こうした意味での「ビジネス化」が可能かという見地でざっくりとよいものを抽出したのが、ビジネスシードとなります。(p.38)

●実際にそれらのビジネスシードを評価し、議論するには、そのシードをもとに「ビジネススキーム」というビジネスの構造を一度作ってみる必要があります。「ビジネススキーム」とは、調達から開発・生産、提供チャネルから営業・マーケティング、回収までをセットとした、「ビジネスとして検討できるロジカルな最小のかたまり」とでもたとえるべきものです。「ビジネスモデル」という言葉が巷間で意味することが、一般に時間感覚のない(そして、市場視点の弱い)ある時点での静的、外部からの影響を受けないビジネス構造を想起させるのに対し、ビジネススキームは立ち上げのイメージや競争環境なども意識した「ロジックのかたまり」となります(単に、ビジネスの各要素を足し合わせたものではありません)。ビジネスシード、及びそれをもとにしたビジネススキームを考える際には、先入観や制限をなくして、ゼロベースで考えることが重要です。(p.38)

●クラウドコンピューティングや電子ブックリーダー端末なども同様です。概念自体はずっと古くから言われ続け、多くの企業がトライアルを行ってきましたが、過去ビジネスとして成功したものはほとんどありませんでした。しかし、今後は有望と考えられるし、具体的なビジネスの成功例も生まれつつあります。ある概念が一度だめだったからもうだめ、というわけではないことがわかるでしょう。ラーメン屋がすべて儲かっているわけではないし、すべて儲かっていないわけでもないということです。ラーメン屋が儲かるビジネスかどうかを論じることに意味はなく、どんなラーメン屋にするかを議論することが非常に重要なのです。それこそが、ビジネスの成否を決めます。(p.40)

●ユーザーニーズ、という言葉も、ビジネスシードを考えるうえで、ポジティブではなくネガティブな影響を与えていることがよくあります。ユーザーニーズを取り入れるというのは、プロダクトマネージャーの最高の逃げ口上です。社内で通りがいいからです。日本の企業は、商品やサービスの企画段階でユーザーニーズを聞こうと複数のターゲットに対しインタビューや調査を行いますが、数人集まればそれぞれがこういう機能があったらいいとまちまちのことを言い出します。その意見それぞれを「生のニーズだ」と、あれも足し、これも足しとなっていき、結局わけのわからない折衷的なサービス、プロダクトになってしまうことがよくあります。「オバケプロダクト」です。それはユーザーニーズを汲み上げることがとにかく「是」だと思っていることに起因していると考えられます。ユーザーの声を反映させることがよいと思っていても、優れた企業はそういう風に「あれもこれも」型で商品やサービスを作ることはありません。(p.41)

●トヨタの初代プリウスにしても、アップルのiPod、iPhoneにしても、実際にはたくさんの消費者調査をしているのでしょうが、開発にあたってユーザーの声を過度に意識した形跡はない。企業側が消費者に提案する形で、世の中にそれを受け入れさせている。(p.42)

●ニーズの過度の偏重、採用の最たるケースが、メーカーが製品ビジネスではなくサービス系ビジネスに進出しようとする場合です。個々のニーズをあれもこれもと足し上げ型でサービス企画をしてしまい、総体としては自分自身がそれを使いたいとか、うれしいと思わないものばかりになってしまうことがよくあります。全般に、サービス系ビジネスは製品開発より開発費がかからず、試作品を作るわけでもないので、関係者が安易にビジネスをはじめてしまう場合が多いように思います。そのため、成功確率はさらに低くなってしまうのではないでしょうか。1ユーザーとして見ると、そんなもの誰も要求していないだろうというものが世の中に出てしまうことが多いように思います。(p.43)

●ビジネスシードを見つけ、それをもとに(ビジネスプランの前段階として)ビジネススキームを構築していく事業企画者に必要なスキルとは何でしょうか。マーケティング、法務、技術知識などそれぞれの専門分野を持つことはもちろん必要でしょう。ベースとして発想力、ロジカルシンキング力なども必要でしょうが、私は「ひとかたまり」のロジックを扱うスキルが最も重要だと考えています。(p.44)

●事業企画者においても、単体のロジックではなく、「ひとかたまりのロジック」「ブロックになったロジック」を扱うスキルが必要だと思います。そのためのトレーニングとしては、たくさんの成功例を見る。全方向にネガティブな思考をするような集団には属さない。1つのロジックが正しい/間違っているからといって判断を下すのではなく、まとまりのロジックを見ながら、それが正しいことをもって「是」とするような集団のなかに所属するなどが考えられます。(p.45)

●文化的相違以外にも、もう1つ買収において重要なポイントがあります。これは自分自身で多くの事業買収を経験しつつ、また人からアドバイスも受けて初めてわかったことですが、パソコンソフト会社でも、出版社でも、プロダクションでも、IT企業でも、大きく言って「企画系業種」とでも言うべき、特定の有能な社員の能力が事業の成否を左右する業種では、事業を支えるために社長の求心力がものすごく重要ということです。極端に言えば、社長が馬鹿でも暴君でも無駄遣いしていてもいいのですが、ただ1つ、求心力がないと会社は総崩れになります。(p.56)

●独占的、安定業種と言われている電力ですら、スマートグリッド化が進んだ未来は自宅で電力をまかなえるようになり、衰退していくかもしれません。そうした環境のなかで、総論としての「いつか新規事業は必要」という考え方に異論は少ないでしょう。しかし、株主が与えてくれる方向性はそこまでなのです。そうした「あいまい」な方向性のなかで、会社組織の各階層は新規事業に対し、それぞれどのように反応するのでしょうか。(p.62)

●自分がはじめた新規事業ならまだなんとか継続しようと思うかもしれませんが、社長交代により前社長がはじめた新規事業を引き継いだ場合などは、その傾向がさらに強まるでしょう。理由は新規事業なのでまだ投資段階であること。もう一つは(前任者がはじめたビジネスであれば)自分がはじめたのではないから、他人(前任の社長)がはじめたことで自分が損をしているという建前が立つことにあります。一般の会社では、新規事業を既存事業と同じレベルで行っていることが多いので、新規事業の赤字はそのまま自社全体のP/Lの営業利益や経常利益に乗ってきてしまうのです。たとえその新規事業が5年後に利益を生み出す可能性が高く、10年後に自社の柱になる可能性は大いにあると思ったとしても、不景気のために年間にわずかでも余分に利益を出したいなら、現社長はやめたいと思うでしょう。(p.63)

●たとえばあらかじめ、あるタイミングで、新規事業のコストを投資勘定なり子会社株式なりにしておいて、本体の営業利益、経常利益のレベルから切り離してやれば、オーナー社長ではない社長からすると新規事業を継続することに対してかなりの後押しになるはずです。本来、社長も新規事業には総論賛成であり、会社の5年後10年後に役立つことをやっているのに、やめるのは忍びないという思いもあるのです。たとえば新規事業投資のための持株会社などを作って、新規事業資金をそこの株式にしておけば、少なくとも精神的にはまったく違うはずです。(p.64)

既存事業と新規事業では、その計画の仕方から成功確率までまったく原理が異なるものです。「昨日の延長線上に明日を考える」という既存事業の文化に染まった多くの役員には、新規事業を判断するための適切な経験も知識もありません。そういう人が役員会などで新規事業の判断をするのです。たとえるなら数学の評価をしなければならないのに数学者ではない文学者がやっているのと同じことです。(p.67)

既存事業の分野を歩いてきた人は、既存事業の原理で物事を考えます。土地勘もリソースもある既存事業分野なら何か新しい展開(たとえば成功商品のラインナップ拡充など)を行うことについて、その成功確率は80%くらいあるかもしれません。そうした世界で仕事をしてきた人が、成功確率がたとえば10%程度と低い新規事業の問題を判断すること自体が間違っているのです。(p.67)

●特性の異なる多くの人たちの総意を集めたら、よりよい決定が起こるというのは間違いであり、それを正さなければ新規事業などうまくいかないのです。多くの人の意見を取り入れれば、過去社内であった経験の参照という意味では多面性を持てるかもしれませんが、そこから新しいものが生み出されることはないでしょう。(p.68)

●新規事業では意思決定の考え方を、「弱点なんて乗り越えるものだ」というある意味「普通」の新規事業の考え方にあわせていくことが必要なのです。新規事業案に弱点なんてあって当たり前なのです(もちろん、弱点を乗り越えられる可能性・シナリオについては検討が必要ですが)。企画に1点でも弱点が見つかって、内容を問わずそのことだけを理由に多数決で企画を否決し続けていたら、新規事業など生まれないでしょう。そうした意味では多人数が意思決定に関わること自体がよくないし、また、その多くが企画に対して責任を負わない関与の薄い人である場合はさらによくない結果となるでしょう。事業開発部が発案する新規事業の決定については、役員会に依らず、大胆に事業開発部に権限を移譲するか、誰もが納得できる責任ある少人数メンバーによって決定を図るべきなのです。(p.69)

認識すべきなのは、新規事業の失敗の原因の多くは社長を含めて誰も新規事業への取り組み方を知らないということにあるのです。そうであるならば、社内で事業開発部長(もしくは担当者)となった者が最初にやるべきことは教育や啓蒙ということなのです。(p.73)

●事業開発部にアサインされた社員側から新規事業を見てみるとどうでしょう。そうした社員にとって新規事業をやらされること自体がリスクになっているかもしれません。逆説的にはなりますが事業開発部として「新規事業を本気で立ち上げないこと」がよい妥協点となるのです。リスクのある新規事業開発を行うよりも、一定期間をかけても何も発案せずに、「何も案が出てこない」というそのことを理由として、解散(もしくは発展解消という名目で、事業部に吸収など)される、というシナリオのほうがよいのです。そもそもの性質として失敗確率が高い新規事業を実際に発案し(おそらくはずるずると自分たちがその立ち上げ担当として)スタートしてしまうと、そのほとんどのケースでは失敗して自分のキャリアが傷ついてしまうのです。それよりは、これだけの時間をかけて検討してみたがやっぱり新規事業は難しい、もしくはいくつか案を考えてみたが、こうした点がダメである・芽がない・自社ではできない、調査会社に市場を調べさせたら将来有望だが時期尚早であるという結論が出た、などという理由を数多く並べて最終的なレポートとすることのほうが悪くない妥協点となるのです。こうした事態を避けるためには、事業開発部のメンバーは、新規事業をやりたいと手を上げたことや、案の良し悪しをさておき発案を行ったという事実だけで評価してあげる形にするべきなのです。ベンチャーキャピタルの社員が投資案件を持ってきただけで評価され、銀行の支店長が融資するまでの責任しか負わないのと一緒で、「発案した」ことだけによって評価してあげるべきで、他の社内にある一般の仕事と同様に成果ベースで考えてはいけません。発案者はその案が決裁を得た時点、「このビジネスをスタートしよう」と決まった時点で、よいプランを持ってきたということで評価されるべきです。さらに、結果、もしそのビジネスが成功しなくてもペナルティーにならないように決めておくべきです。(p.74)

関係者は新規事業に手を上げただけで報奨を受け、さらにビジネスが成功した時はもう一度報奨を与えればよいのです(もちろん、その原資が十分捻出できるレベルの成功を報奨の判断基準としますが)。そうでないと、そもそも発案することさえ嫌になってしまいます。それから発案者が実際の運営者にならなければならないというルールもあらかじめ明示的に取り除いて置くべきです。「言い出しっぺがやる」は一見フェアのようですが、まったく根拠がありません。「会社のためにはこの新規事業をはじめるべきだと強く思っている。けれど、自分が実際の運営者になるのは嫌である。自分にはその才能もないので」というケースが多いのです。優れた発案者が、経営能力を問われるために発案できないというシステムは、単にばかげています。こうして見ていけば、企業が新規事業を進めていくために必要なのは「事前準備」であることがわかるでしょう。(p.76)

●社長は新規事業が必要といって新規事業をやらせようとしますが、実際、本業で大きなかじ取りをしなければいけないことの必要性を、イコール、新規事業の必要性と取り違えている可能性があると思われます。たとえば、本業における売上げ縮小が続いている場合などはその傾向が強いでしょう。本来は、「本業の縮小=新規事業の必要性」という1対1対応ではないはずなのに。自社が置かれている現状に対し、新規事業が必要と集約してしまっていいのでしょうか。既存事業での大胆なテコ入れなど、新規事業よりも先に取り組むべき重大な問題が本当はあるのではないのでしょうか。(p.85)

●2つ目に問題なのが「新規事業を担当するセクションを作れ」という指示です。この指示では、指名された人はその人自体が新規事業を作り出さなければならないのか、新規事業立ち上げの器になるのか、もう少し言えば、このセクションは新規事業のための予算もある程度持っているのかなど、はっきり定義されていません。事業開発部を立ち上げるためには、本来それらを細かく定義する必要があるのです。実際には先ほどのようなあいまいな指示で多くの事業開発部が作られてしまい、自分たちが新規事業の社長になっていくのか、新規事業のビジネスシードを集めるのか、それを育ててサポートしていくのか、などは明確に決まっていないのです。おそらく、全体像もイメージできないままとにかく関係することは全部やるんだろう、という程度でしょう。(p.86)

●事業開発部が本来あるべき姿・役割は、まず、自社において「新規事業が継続して立ち上がる仕組み」をきちんと作りあげ、それをもとに、新規事業創出の器となることです。(p.87)

●事業開発部にアサインされたメンバーが、「自分たちで新規事業を立ち上げるのか、仕組みを作るのかをわからずに」無闇に動き出してもうまくいくことはありません。本書では、その「事業開発部」設置前のプレ部隊を「プレ事業開発部」と呼ぶこととします。「プレ事業開発部」が行うべきことは明確です。まずやるべきことは、自社にとっての新規事業の目的を定めることです。しかし本来は、その前に「そもそも必要なのは新規事業なのか」どうかを判断する必要があります。(p.88)

●どちらかと言えば、このプレ事業開発部にアサインする人材は新規事業自体の専門家・適正を持った人というよりも、むしろ常日頃から会社全体の経営戦略を考えている人間が適当でしょう。経営企画部の人間などがよいと考えます。新規事業だからと言って最初からアイデアマンや立ち上げのバイタリティのあるメンバーを集めてはいけないのです。こうした考えがないので、最初から社内のアイデアマンを集めて、「あいつならいい新規事業が作れそうだ」といって事業開発部を作ってしまいます。プレ事業開発部は、まず、自社の事業環境などを分析し、新規事業の目的や、自社の新規事業のあるべき姿・要件や、新規事業立ち上げの仕組みなどを検討していきます。(p.89)

●事業開発システムのコンセプトは、組織面においては、新規事業の「①プランニング・プロデュース」と「②投資判断・評価」そして「③運営」の、それぞれを別々の組織にて行うというものです。「①プランニング・プロデュース」は、従来の「事業開発部」に近い機能を持つ部署となりますが、その機能を明確にするために、本書では「インキュベーションチーム」と呼称します。(p.94)

●このように、インキュベーションチームは新規事業立ち上げ段階では運営主体とならない(もしくは、徐々にフェードアウトする)ことを前提とします。そのことによって、自社の新規事業創出のノウハウが、常にすべてこのインキュベーションチームへ蓄積され、企業が継続的に新規事業のプランニングを行えるベースとなっていきます。(p.97)

●インキュベーションチームは、当初は2~3人の少人数でかまいません。ただし、専任であることは必須でしょう。メンバーとしては、社内でも事業プランニング経験があったり、外部や社内各部署とのネットワークを持つことや、法務・マーケティングなどの専門分野があるなど、新規事業に貢献できるリソース・スキルがあることが望ましいでしょう(ただし、いずれも必須ではありません)。~(中略)~いずれのメンバーも、新しいことに柔軟に考えることができ、新規事業に対して前向きな姿勢を持っていることは大前提となります。(p.99)

●「スモールスタート」が常態化している企業では、「会社の次の柱となる新規事業を立ち上げろ」と社長が発破をかけながらも、資金面での足かせが大きいため、蓋を開けてみると細かい(会社の柱となりえないような小さな)売上げしかない新規事業がたくさん立ち上がって手が回らない、といった状態になりがちです。建築家が高層ビルを建てる時に、平屋と同じ基礎や構造を使うことがないのと同じように、ある規模のビジネスを立ち上げるためには、適切な投資額というものがあります。もちろん、会社が傾くような規模の投資を行うことはナンセンスですが、「スモールスタート」という縛りを入れることで、立ち上がるものも立ち上がらなくなることがあるのです。(p.114)

●◎ビジネス選定基準の例
●目的合致性
・自社の新規事業目的に合致しているか。
・目的を達成するのに十分な売上げ規模・収益率を期待できるか(売上げ○○億円、営業利益率○○%)。
・目的を達成するのに十分な成長スピードを期待できるか(右記目標を○年で達成可能性あり)。
ビジネスとして付加価値が十分に高く、またその状態を長期にわたり維持が可能と思われるか。(p.119)

●一般にビジネスを立ち上げていく際には、参入する市場自体が成長状態にある場合のほうが、何らかの形でその成長の恩恵を受ける可能性が高いため、生き延び成功する確率が高いと言えるでしょう。(p.124)

●自社の既存ビジネスが衰退している場合でも、既存ビジネスに近い領域では成長市場や大規模市場がある場合はよくあります。たとえばニコンが双眼鏡や測量計などの光学系技術を活用して、半導体のステッパー(半導体用の露光装置)に参入したことや、富士フイルムやオリンパスが光学系の技術を活用して高度な医療機器に参入する、といったものがそうした例になるでしょう。(p.126)

●こうした「ルールを作れる・変えられる市場」かどうかを既存の分析手法から導出できるでしょうか。新規事業を探索するのにSWOT分析を行うのが悪いとは言いませんが、そこからこのような視点が導出されることはおそらくないでしょう。新しいゲームなのです。そこには、新しいルールが出現する。グーグルを見ているとつくづく思い知らされます。既存のフレームワークは万能ではないし、誰もが必ず正解にたどり着く万能の方法やステップなど存在しないと考えるべきです。(p.134)

●最後に、捕捉になりますが、メーカーに対し「イマージングマーケットでルールを変えていく」という話をすると、すぐ、「新しい技術」という発想になってしまいます。しかし、大事なのは技術革新よりも新しいコンセプトを生み出すことです。日本人が新しいコンセプトを作るのが苦手、などと巷間では言われることもありますが、そんなことはありません。最初のCPUを考え出したのは日本人だし、ウォークマンを考えたのはソニーです。例を挙げればきりがありません。日本人には技術もさることながら、優れた発想力があります。わたしは確信を持ってそう言えます。足りないのは能力ではなく、自分の頭で考える努力なのです。(p.135)

●ビジネスプラン作成にあたり、必要に応じてターゲット調査やヒアリングなどをかけるのもよいでしょう。ただし、調査は市場の概要を総体的に把握し市場勘をつかむ際や、どうしても既存資料だけでは判断できない仮説の検証など、限定的に使っていくべきです。特に、イマージングマーケットにおいては、市場調査を過信すると、その後のプランニングの方向を大きく違えることとなります(そんな市場は存在しないという答えが返ってきがちです)。(p.138)

●提携型ビジネス、いえ、提携にとどまらず、関係先と交渉が発生するようなビジネスの場合、プランがきちんとできていない段階で相手に接触することは、それ自体が提携の可能性をつぶしかねないのです。なぜかといえば、多くの人は完成していない途中段階のものの話だけから完成形をイメージしてくれるような想像力など持ち合わせていないからです。~(中略)~この部分は現在詰めている最中だが、これからこれだけよくなるから、という話をしても、相手にそれを好意的に解釈してもらうよう期待するのは無理な話なのです。相手が、今ある弱点(その弱点自体はプランの本質とは異なる些細なものであっても)を理由にその企画全体にNOを出す可能性は非常に高いと言えます。人は弱点を見つけるとその全体にネガティブな反応を示すものなのです。(p.140)

●ですから、投資委員会などビジネスプランを評価する経営側も、提携型ビジネスを評価する段階で無責任に「事前に相手側にヒアリングに行くべきではないか」などとコメントするべきではありません。ビジネスプランは大げさにいえば相手に突きつけるものなのです。(p.143)

●また、新規事業体の本拠は会社形態である場合もそうでない場合もできるだけ、既存事業部とは物理的に切り離された場所のほうがいいと思います(既存事業部内に設置した場合などはしかたありませんが)。新規事業という新しい文化を育てて行こうとする際に、既存ビジネスの文化のする側に置くことにはネガティブな影響しかないと思います。そして、店舗型ビジネスやサービスビジネスなどでは極力顧客のいるところやビジネスが起こる現場に近い場所に拠点を設置し、新規事業メンバーがいつでも見に行けるような状況に置くことが重要です。それこそ人数が少なければ最初はワンルームマンションの1室でもかまわないのです。それだけで、明らかに成功確率が違ってきます。「既存事業から切り離され」「ビジネスが起きている現場に近い」ことのほうがより重要です。(p.148)

●月1回の報告会で使用する報告書の形式についても留意が必要です。すでにビジネスとして成立している既存事業部の事業と異なり、新規事業はまだ成立するビジネスかどうかもわかりません。ですので、既存事業によくあるような、数値目標を立てて売上げ達成率や成長率を評価するスタイルの報告書の意味はあまりありません(項目として入れておくことは意味があるとは思いますが、立ち上げ初期においては参考程度の意味しかないでしょう)。(p.154)

●なお、新規事業の事業計画は、現実に合わせて次々に書き換えられるべきです。幾度も書き換える手間を惜しんではいけません。(p.155)

●当初に成功/失敗基準として設定した時期になれば、その段階での評価をもとに、「失敗」との判断の場合は原則的に例外を設けず粛々と撤退を行います。(p.156)

●上記は成功報酬についての考え方ですが、社長(運営責任者)の日々の給与についてもとっているリスクや動労時間を考えて、本体の通常基準よりもベースを増やしてあげるべきでしょう。本来、サラリーマンに新規事業をさせようとしているのですから、そうした配慮が必要です。そのほうがやる気も出るし誇りも持てます。インキュベーションチームメンバーに対しても、自身が関与したビジネスプランが事業化された段階、また、ビジネスが成功にいたった段階などにおいて特別な賞与を与えていくべきでしょう。額はよく考慮すべきですが。社内において新規事業に関係していくメンバーを報奨面においてもスターにしていくべきなのです。(p.159)
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