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岡本浩一著「無責任の構造」
この本の副題は「モラル・ハザードへの知的戦略」です。「モラル・ハザード」を検索していて、この本を見つけました。第2章までは事例が多く分かりやすかったのですが、第3章からは専門すぎて分かりにくい部分が多かったです。



●本書は、「無責任の構造」について、その構造と人格的要因を社会心理学の理論的な視点から解説し、それをあらためるための具体的な提案のいくつかについてまで踏み込んでいこうという書である。(p.20)

●JCOの工程違反の経緯を詳細に見ると、遅くとも93年には、いつ臨界事故が起こっても不思議でないような工程変更を原子力安全委員会に無届けで行っていた。~(中略)~それらの工程変更は、社内の会議など正規の意思決定手続きで決定されながらも、政府には秘匿されていた。あの「事故」は、その「無責任の構造」によって起こったのである。このプロセスで、「それは危険だ」と声をあげようとしてその勇気がなくできなかった人や、声をあげたために地位や人間関係で不利益に耐えねばならなかった人たちが、幾人かいたことだろう。~(中略)~彼らの圧殺された良心を思うとき、私は刺すような痛みを心に感じる。しかし、それでも酷なことを書くが、圧殺され表明されなかった良心は、究極のところ、存在しなかったのと同じである。脆弱な良心は良心たり得ない。「あのとき自分が心配したとおりになった」という良心は、そのときに表明され実施されなかった限り、良心と呼ぶにふさわしいとは言えない。(p.21)

●日頃から、部下などに意見を尋ねるときに、「自分の意見は後で言うけれども、自分の意見が間違っていることがあってはいけないから率直なところを聞かせて欲しい」と、明瞭に言ったうえで、意見を求めることがまず必要である。~(中略)~次に、意見が同じ場合も異なる場合も、相手の意見を聞いたらすぐに自分の意見を伝えることである。このようなことを返報性というが、返報性を守ることが信頼関係を守ることにつながる。相手の立場に立ってみたら、意見を言うことはリスクである。そのリスクは、上司たるあなたが部下に意見を伝えるリスクより大きいはずである。したがって、そのリスクを冒してくれたことに謝する意味で、自分の意見も伝えるのである。(p.74)

●「無責任の構造」は、ほとんどつねに、集団のなかに形をなしている。したがって、「無責任の構造」から逃れるためには、集団とはどういうものなのかを理解しておくことが有用である。人は、単独のときと集団のなかにいるときでは異なる行動や思考をするものなのか、それは、集団のなにがそうさせるのか、ということについて、おおまかな理解をしておくことが必要なのである。(p.100)

●すなわち、集団の場合のほうが、低い成功確率で、冒険的選択肢を選ぶという回答になっていたのである。これを、社会心理学の用語で「リスキーシフト」と呼んでいる。集団の意思決定のほうが危険性が高い(リスク)ほうにシフトしやすいという意味である。さらに、討議後の個人判断を見ると、討議前の個人判断よりリスキーな判断になることも多くの研究で追試されている。(p.106)

●集団で意思決定しなければならないときは、複雑な情報処理がうまくできない。技術的にどう見ても間違っているとしか思えないような決定が上部の会議でなされることが往々にしてあるのは、このことをよく示している。(p.109)

●集団行動における優勢反応の一つとして、認知が容易な主張に傾きやすいという特徴がある。リスキーシフトはそのようなものの一つだと考えることもできる。言及しやすい主張が、認知的にも把握しやすく、支持を得やすいのである。したがって、自分の議論を展開するときに、「○○方式」「○○戦略」のような、内容を要約するような短い題をつけることは有用である。(p.110)

●読者が、職場における「無責任の構造」の問題に直面しているとき、まず、自分の職場がどの程度に属人主義的風土をそなえているかをチェックしてみるのがよいと考えている。チェック項目の例をあげてみよう。
①忠誠心を重く見る。
仕事の出来・内容よりも、職場や上司への忠誠心や所属感が人事評価に重きをなすのは、属人主義的風土の大きな特徴である。~(中略)~
②上下関係において公私のけじめが甘い。
上司の引っ越しの手伝いに駆り出されるなどというのが、もっとも典型的な例である。~(中略)~
③「鶴の一声」で物事が決まったりひっくりかえったりする。
~(中略)~
④些細なことも細かな報告を求めすぎる。
~(中略)~賢明な上席者ならば、すべてのことについて報告を受けても自分が対応できないことがわかっているものだ。~(中略)~
⑤「偉業」が強調される。
~(中略)~
⑥犯人探しをする傾向が強い。
いくつもの要因があったためにある仕事がうまくいかなかったときに、いくつもの要因があったという認識をしようとせず、むしろ、少数の個人に責任を帰属させようという傾向の議論をする職場は属人主義的であると言ってよい。~(以下、略)~(p.162)

●すべての人に嫌われる必要はない。しかし、自分の責任を果たすためには、すべての人に好かれたいという気持ちを押さえる必要があるということを自覚している人は少ないものである。(p.188)

●認知的複雑性を高く維持するためには、まず、日頃から関心領域を広くしておくことが必要である。新聞や雑誌に丹念に目をとおし、新刊書も定期的にチェックするべきである。自分の職業以外の領域のものを読む行為そのものが認知的複雑性を高く維持する原動力の一つである。「あっ、これは自分に関係がない」と言って読まないという思考スタイルそのものが認知的複雑性の低い行動だと考えてよい。広い関心領域の読書は、思考能力の柔軟性を高める。それが、職業領域において、他者が見落としている問題点を見つける能力や、自分の意見の妥当性を慎重に見極める能力に通じる。(p.189)
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